悠木 碧 / イシュメル

めくるめく展開の鮮やかなサウンドと魅惑的なヴォーカルに圧倒される、“ハコニワ”的悠木 碧ワールド! ポップで摩訶不思議な1stフルアルバム!!

 

『魔法少女まどか☆マギカ』の主人公、鹿目まどか役などでもおなじみの人気声優、悠木 碧。2012年3月にはミニ・アルバム『プティパ』でアーティストとしてデビュー。新居昭乃、保刈久明が参加した2013年2月リリースの2ndプチ・アルバム『メリバ』を経て、2015年2月に完成した1stフルアルバムが『イシュメル』。全作詞を藤林聖子が手がけ、bermei.inazawa、辻林美穂、MANYO、zakbeeらが作曲で参加。今作では“スキマ”をキーワードに、『プティパ』『メリバ』からの“ハコニワ”的世界観を引き継ぎ、さらに広がりを増したキュートでポップな悠木 碧ワールドが展開されている。

「アールデコラージュ ラミラージュ」

作曲・編曲はbermei.inazawa。Annabelとのユニット“anNina”のTVアニメ「ひぐらしのなく頃に解」のエンディングテーマとなった「対象a」、またTVアニメ『ヨルムンガンド』エンディングテーマ、やなぎなぎ『Ambivalentidea』の作曲・編曲を担当している。茶太、片霧烈火、霜月はるからとのコラボ作品を発表など同人音楽からメジャーまで幅広いフィールドで活躍しているアーティストだ。

悠木 碧のデビュー・ミニ・アルバム『プティパ』では「回転木馬としっぽのうた」を手がけており、その万華鏡のように煌めくファンタスティックなサウンドによって、悠木 碧の音楽的方向性を印象付けた。悠木 碧がイメージする世界観を独特な手法で音像化する“ハコニワ”演出家の主要メンバーであり、今作では、TVアニメ『世界征服~謀略のズヴィズダー~』のエンディングテーマとなった「ビジュメニア」、スローモーションに映る風景にまどろむような「たゆたうかなた」、甘美な“ほぇ”を潜めた「ソラミミPiZZiCATO」も手がけている。「アールデコラージュ ラミラージュ」は「回転木馬としっぽのうた」の方法論を押し進め、前衛をさらにポップへと昇華。展開はさらに大胆に、豊穣な音の渦に翻弄されるままに秒針が進む、魅惑的な仕上がりとなっている。

CDでも不可思議なイメージが伝わってくるものの、その世界観にもっと入り込んだのはハイレゾの方。アヴァンでトイポップな室内楽が時には壮大に繰り広げられる、伸縮自在のスケール感が映し出され、覗き込んだ“スキマ”の奥行きは合わせ鏡のように果てが無い。おもちゃ箱をひっくり返したように溢れる情報量が音のタペストリーを紡ぎ、目の前で鮮やかに広がる。また途中に挿入される柱時計の鐘の音やフクロウの鳴き声など、場面転換で異なる臨場感も印象深い。キレの良いエディットや精緻なプログラミングがなされるとも、ネジが巻かれるクラシカルな世界観と均衡を保つアナログな感触も伝わってくる。
解像感が悠木 碧の声質をリアルに表わし、センテンスごとに変わり行く抑揚の微妙な変化が聴き取れる。それは声を演じ分ける声優ならでは、というよりもむしろ歌い手としてのスキル、また悠木 碧の天性のセンスといったものが感じられる。時に語り手のようなクールな声が入り混じり、メルヘンとミステリアスな雰囲気が交錯する幻影風景のイメージを膨らませる。

「クピドゥレビュー」

TVアニメ「彼女がフラグをおられたら」のオープニングテーマとなった2ndシングル。作曲・編曲のzakbeeは、レゲエのテイストを取り入れた下北沢のバンド“POMERANIANS”のメンバーであり、花澤香菜、ChouCho、寺島拓篤らの楽曲も手がけている。アップデートしたスウィングジャズを弾けたポップセンスで綱渡りする、スリリングかつ時にはユーモアたっぷりに展開されるこのサウンドは、現代版スパイク・ジョーンズ(冗談音楽の方)か、はたまたレイモンド・スコットか。ジャズる悠木 碧。

その洒脱でとっ散らかった感覚がぐいぐいと近づいてくるのは、やはりハイレゾ版。張り出すリズムがスウィングの快活なノリの良さを引き出しており、音色は厚みを増しなおかつスピーディに、次々とカットが切り替わるようなテンポが小気味好い。また手を替え品を替え飛び出してくる音の仕掛けも鮮明にアクセントを付ける。そして、“プレミア”が“ぷれみゃ~”に、“終わらない”が“終わらにゃ~い”に聴こえる悠木 碧のキュートな歌声が炸裂。クピド(天使)のようにすこぶる甘い歌声が耳元をくすぐる。とはいえ、歌詞からは結構大雑把で辛辣なコメントばかりを放つ、この歌の主人公が浮かび上がってくる。天使であり悪魔的な二面性を演じる活き活きとしたヴォーカルを楽しむことができる。

「SWEET HOME」

Tomgggのアルバム『Butter Sugar Cream』、Ano(t)racksレーベルのコンピ『Light Wave ’14』などに参加、2016年4月にはデビューアルバム『クラルテ』をリリースと、インディーズ・シーンでも注目を集める新進気鋭のシンガーソングライター、辻林美穂によるナンバー。今作では「SWEET HOME」の他に「ロッキングチェアー揺れて」の作曲・編曲、「迷宮舞踏会」(編曲はRhodanthe*「Your Voice」などのアレンジを手がける上杉洋史)、「ダスティー!ダスティーストマック」「Angelique Sky」の作曲を手がけていることからも、彼女に対する信頼、期待の高さが窺える。

「SWEET HOME」は、優しい雰囲気が漂う生楽器のアンサンブルにふと“スキマ”が滑り込む、ちょっと不思議な楽曲だ。音像がクリアになり、各楽器の質感が明瞭に耳に届くハイレゾではウッドベースの胴鳴りやオーボエの音色もふくよかに、さりげないカスタネットの響きも繊細な、穏やかで柔らかい空気感が心地好い。ワルツのテンポに乗り、弾む歌声はこの曲の主人公である女の子の姿を丁寧に描く。幸せな日々の中、でも“スキマ”のことに気づいている、あどけない無垢な声。そして、“スキマ”からささやく「ぼく」の声が加わり、女の子にそっと寄り添う。同じ人物が演じるふたつのキャラクターが違和感なく重なり物語を綴る、心の動きを絶妙なニュアンスで示す悠木 碧の表現力が実に豊かだ。

無数に並ぶ扉を行き来する、変幻自在のスモールワールド『イシュメル』。悠木 碧が思い描く世界を鮮やかに深く描き出すハイレゾ版では、曲によって変化する彼女の歌声や語感がそのままの姿で再現されており、もたらされるイメージにいっそう没入できる仕上がりだ。悠木 碧の才能が存分に発揮されている、そしてキュートな魅力がますますあふれ出すアルバムとなっている。

 

悠木碧
イシュメル

FlyingDog
2015.02.11

FLAC・WAV 96kHz/24bit

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 収録曲

 1.SWEET HOME
   作詞:藤林聖子 作曲 編曲:辻林美穂

 2.アールデコラージュ ラミラージュ
   作詞:藤林聖子 作曲 編曲:bermei.inazawa

 3.ビジュメニア
   作詞:藤林聖子 作曲 編曲:bermei.inazawa

 4.twinkAtrick
   作詞:藤林聖子 作曲 編曲:MANYO

 5.たゆたうかなた
   作詞:藤林聖子 作曲 編曲:bermei.inazawa

 6.迷宮舞踏会
   作詞:藤林聖子 作曲:辻林美穂 編曲:上杉洋史

 7.ロッキングチェアー揺れて
   作詞:藤林聖子 作曲 編曲:辻林美穂

 8.ソラミミPiZZiCATO
   作詞:藤林聖子 作曲 編曲:bermei.inazawa

 9.ダスティー!ダスティーストマック
   作詞:藤林聖子 作曲:辻林美穂 編曲:zakbee

10.クピドゥレビュー
   作詞:藤林聖子 作曲 編曲:zakbee

11.Angelique Sky
   作詞:藤林聖子 作曲:辻林美穂 編曲:zakbee