悠木 碧 / プティパ

2012年のデビュー・ミニ・アルバムが待望のハイレゾ化!ポップでちょっと奇妙なサウンドで箱庭世界を描き出す、不思議な物語が始まる!!

 

“箱庭の中の移動遊園地”をコンセプトとした2012年のデビュー・ミニ・アルバム『プティパ』。今作は悠木碧の20歳となる誕生日(3月27日)に合わせてリリースされた(『K2HDプロセッシング』を用いて制作されたハイレゾ版は2016年9月14日)。それぞれの楽曲に登場するキャラクターが“ハコニワ”の住人という、悠木 碧が思い描くイマジネーション豊かな世界観が8つのサウンドに反映されている。レコーディングとミックスには、2011年以降、澤野弘之の劇伴や彼が関する作品のほとんどに(SawanoHiroyuki[nZk]名義では全ての作品)参加している相澤光紀がメインのエンジニアとして携わっている(「時計観覧車」「シュガーループ」は寺田康彦とDECO*27が共同でミックスを行なっている)。フランス語で“小さな歩み”を表わすタイトル通り、小柄な彼女のアーティストとして進み始めた小さな一歩が、参加アーティストの感性と科学反応を起こし、ポップでちょっと奇妙な楽曲の数々を作り出している。

「回転木馬としっぽのうた」

作詞は、坂本真綾や花澤香菜の作品でもおなじみの岩里祐穂。作曲・編曲は、同人音楽からメジャーまで幅広いフィールドで活躍中のアーティスト、bermei.inazawa。最近では、2016年7月20日にリリースされた“ぼくのりりっくのぼうよみ”の1stEP『ディストピア』の収録曲「Water boarding」のトラックを制作している。2015年2月11日にリリースされた悠木 碧の1stフルアルバム『イシュメル』では、リードトラックとなる「アールデコラージュ ラミラージュ」を含め4曲を、また2016年12月にリリースされる悠木 碧の3rdプチ・アルバム『トコワカノクニ』では6曲のうち3曲を手がけており、今作に収録されている「回転木馬としっぽのうた」と「Night Parade.」は、彼が悠木 碧サウンドの中核を担うきっかけを作った曲でもある。

飼い主とはぐれた、街はずれの回転木馬の前で途方にくれるネコの姿を描くこの曲は、その目にはまわっている“光の国”と映る一人称の歌詞同様にサウンドからもネコの目線が感じられる。人間よりも体が小さく回転木馬を見上げる存在であり、聴覚が鋭いネコにとっては、この曲のサウンドのようにダイナミックな音世界として迫ってきているのだろう。

ハイレゾではCDよりもさらに分離感と立体感を増した楽器の配置となっており、空間の広がりが余裕のある音の響きを生み出している。シャープな音像の中、鼓笛隊の如く小気味好くアクセントを刻むスネアドラムの瞬発力、また木管楽器の低域の豊かさやグロッケンシュピールの煌めきも印象的に、万華鏡のように鮮やかにめくるめく音のメリーゴーランドが繰り広げられている。様々な音を詰め込んだ華やかな楽曲だが、それぞれの音の存在感を際立たせつつもアンサンブルとして非常にまとまりのある、精緻なアレンジとバランスのとれたミキシングが感じられる。

悠木 碧のヴォーカルは、CDよりも背景となるサウンドから一歩前へと押し出されており、囲まれているような賑やかな楽器との距離感もかえって小さな主人公の心細さやさびしさを表わしているかのよう。その甘い歌声は少し低めながらも軽さを忍ばせ、柔らかな質感とおっとりとした抑揚で、あどけない子猫である“ぼく”を表現している。飼い主の少女と再会し、その腕の中に抱かれる終盤では、喜びと安堵に包まれたまどろむような声がもたらす、ふんわりとした温かい雰囲気が心地好い。

「Baby Dolly Alice」

作詞は藤林聖子。今作『プティパ』では「Baby Dolly Alice」のみだが、2ndプチ・アルバム『メリバ』以降、悠木 碧の楽曲の多くに参加をしており、『イシュメル』『トコワカノクニ』では全曲の作詞を手がけていることからもわかるとおり、悠木 碧の思い描く幻想的なイメージを言葉に映しとる、“ハコニワ”制作には欠かせない一員となっている。
そして最近では『ふらいんぐうぃっち』のエンディングテーマ「日常の魔法」のアレンジも手がけている川田瑠夏が作曲と編曲を担当。悠木 碧も出演している『彼女がフラグをおられたら』(橋本由香利と共作)や『きんいろモザイク』『ご注文はうさぎですか?』『私がモテてどうすんだ』などの劇伴や、「イマカラキミノモトヘ」「モノクロ―ム」「ハレノヒ幻想曲」「ほんのちょっと」 など堀江由衣の楽曲の数々、また牧野由依の「囁きは“Crescendo”」、坂本 彩とのユニット“AyaRuka”のシングル『押しちゃうぞ!!』、『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』のオープニングテーマなどもからもわかるように、キラキラとしたガーリーなサウンドを得意としている。

くっきりと弾けるピチカートから始まるこの曲は、輝きが溢れるようなサウンドが、陽光が射し込む昼下がり、屋敷の庭でお人形遊びに興ずる少女の姿を照らし出す。ハイレゾでは解像感がサウンドをよりカラフルに、ダイナミックレンジの広がりがはずむ音をさらにリズミカルに、楽曲のポップな印象を強めている。

悠木 碧の歌声はまさにキュートさが満開といった魅力的なものではあるが、やや誇張気味の抑揚が何処か不自然な印象を与える。これは2番目の歌詞“ママもお出かけね パパも出張かしら?”から徐々に明らかになってくる通り、悠木 碧が演じる主人公はお人形遊びをしている少女ではなく、実は“アリス”という名の少女と遊ぶ人形の方であるからだ。少女のことを私の“青い瞳のお人形”と呼んでいる人形の想いがさらに強く浮かび上がってくる後半ではサウンドが怪しげなものへと切り替わり、悲しげな声とともに、捨てられそうになった雨の晩の出来事を映し出す、スリリングな展開をみせる。ラストではまた元の明るいサウンドへと戻って来ながらも、声にうっすらと漂う不安げな雰囲気はぬぐいきれず、楽曲中で繰り返される“La-La….La-La…抱きしめてよ”のフレーズもここでは何となく空元気であるかのように寂しげに響く。

後半からは前半とは異なり、歌声が妙に生々しい表情に変わってきており、“もう二度と 離れない あなたのそばにいる”の言葉のように、心に潜む独占欲といった感覚もリアルに、表からは読み取りづらい女の子の内面を人形に置き換えて描写している。作詞から作曲・編曲、歌唱まで女性陣であることも説得力がある。

オルゴールと静謐なピアノの音色が始まろうとする“ハコニワ”の中の物語を表わす「ハコニワミラージュ」
疾走感のあるビートに滑らかなストリングスが重なる「ジェットコースターと空の色」
爽やかなバンドサウンドに声が美しく映える「時計観覧車」と、少年のような歌声で遊園地のコーヒーカップの二人(実は砂糖)を描く青春ソング「シュガーループ」は、悠木 碧のフェイヴァリットであるDECO*27による作詞・作曲・編曲
妖しげに展開する不可思議なサウンドに声色がさまざまに変化する「Night Parade.」
優美なストリングスが加わった室内楽曲によるクロージング・ナンバー「ハコニワソレイユ」

聴きごたえのある楽曲が並んでおり、ミニ・アルバムと言えどもヴォリュームを感じさせる充実した内容に仕上がっているデビュー作「プティパ」。今作で打ち出したファンタスティックな世界観はその後の作品にも引き継がれており、悠木 碧が好む擬音などの言葉遊びもふんだんに用いられている。ヴォーカリストとしての天賦の才能も早々と披露している悠木 碧だが、次作以降もその歌唱力がますます巧みにそして豊かになっており、表現者として進化を続ける姿が作品から伝わってくる。

VTCL-60299悠木 碧
プティパ

FlyingDog
2012.03.28

FLAC・WAV 96kHz/24bit

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 収録曲

 1.ハコニワミラージュ
   作詞:中野愛子 作曲・編曲:井内啓二

 2.回転木馬としっぽのうた
   作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:bermei.inazawa

 3.ジェットコースターと空の色
   作詞:岩里祐穂 作曲:大凪 樹 編曲:上杉洋史・大凪 樹

 4.時計観覧車
   作詞・作曲・編曲:DECO*27

 5.Baby Dolly Alice
   作詞:藤林聖子 作曲・編曲:川田瑠夏

 6.シュガーループ
   作詞・作曲・編曲:DECO*27

 7.Night Parade.
   作詞:中野愛子 作曲・編曲:bermei.inazawa

 8.ハコニワソレイユ
   作詞:中野愛子 作曲・編曲:井内啓二