教えて純之介さん!Lantis音楽プロデューサー佐藤純之介がズバリ回答!!「マスタリングって何ですか?」Vol.1

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レコーディングされた音源がCDになるまでには、「MIX(マルチトラックで録音された音をまとめる作業)」そして「マスタリング(各トラックをアルバムとしてまとめる最終作業)」という工程がある。今回のスペシャル・インタビューは、今ひとつイメージが掴みづらい「マスタリング」にスポットを当てることにした。

9月某日、AST MASTERING STUDIOSで行なわれたTVアニメ『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!』のサウンドトラック『Elektronische Musik für ILLYA』のマスタリングに立ち会い、作業終了後、作品の音楽プロデューサーである佐藤純之介氏と、音楽を担当したTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのフジムラトヲル氏と石川智久氏に話を聞いてみた。

マスタリングの話のみならず、パソコンへのCDの取り込み方法や再生環境に関する話題など、前回の取材に引き続き盛りだくさんの内容となった。またTECHNOBOYSのふたりにサウンドトラックについて詳しく語ってもらった。教えて純之介さん!Lantis音楽プロデューサー佐藤純之介がズバリ回答!!「ハイレゾQ&A」と併せて読んでほしい。

※教えて純之介さん! Lantis音楽プロデューサー佐藤純之介がズバリ回答!!「ハイレゾQ&A」の記事はこちら

Interview By 田中尚道(クリエンタ)
Text By 青木佑磨(クリエンタ/学園祭学園)
At AST MASTERING STUDIOS

 

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TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND『Elektronische Musik für ILLYA』

 

Q.  マスタリングってどんな作業なんですか?
A. アーティストが作った音源を、聴く側の目線で最終調整してもらう工程です。

──前回のインタビューで「ハイレゾとCDとで、それぞれに適したマスタリングを行なっている」「マスタリング技術の向上によって、CDの音質も良くなった」というお話をしていただきましたが、その「マスタリング」とは一体どういった作業なのでしょうか?

佐藤純之介 マスタリングは、制作した音源の最終調整を行う工程です。我々が作った段階では曲によって音圧に差があったりするので、マスタリング・エンジニアさんと一緒に収録される全曲を通して聴いて、足りない帯域を補強してもらう作業が含まれます。「聴き所」というのは作る側と聴く側に若干差異があるので、そこをマスタリング時にエンジニアの方に調整してもらうわけですね。ひとつの作品に色々なジャンルの音楽が詰まっている中で、聴きやすい流れを作ってもらうんです。CDのマスタリングでは、CDに収めたときに一番気持ち良く聴こえるようにしてもらいます。

──「楽曲制作には携わっていない人に、聴く側の目線で最終調整をしてもらう」ということでしょうか。

佐藤 そうですね。言ってみればお医者さんみたいなものかなと。この工程で、最終的に聴きやすくアウトプットできるように直してもらうんです。

石川智久 リハビリみたいなものですね。

佐藤 そうそう、そんな感じです。また元々のマスター音源はハイレゾでレコーディングされているので、CDのマスタリングでは「16bit/44.1kHzという器の中に、どれだけ高いクオリティ収録できるか」という作業をやってもらっています。

──今回のマスタリングでも元々ハイレゾ音源で録音されたものを、CDにベストな状態で収録するために調整していたわけですね。どんな音源にも必ずマスタリング作業はあるのでしょうか?

佐藤 はい。どんな作品でもマスタリングはしていると思っていただいて結構です。一般流通のものなら、必ずマスタリング・エンジニアの手を通ってアウトプットされています。

──TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのおふたりはマスタリングの際にどんなことに注意されていますか?

石川 それぞれの曲のバランス、またアルバム全体としてのバランスを考えていますね。レコーディングやMIXの際に見落とされていたノイズの混入についても注意を払っています。

160930-mw-194011フジムラトヲル あと、曲と曲の間の長さはアルバムを一つの作品として聴いたときに大事な要素ですので注意しています。

──マスタリングという作業についてどのように考えていますか?

石川 そうですね、トラックダウンされたものをいかにリスナーに聴きやすく届けるかという作業がマスタリング。とても重要な役割だと考えています。

フジムラ トラックダウンは一曲一曲行なうので、今回のサウンドトラックのように曲数が多くなればなるほど、それをまとめるマスタリングという工程の比重が重くなってくると思います。

Q. マスタリング・エンジニアってどんなお仕事なんですか?
A. バラバラな音源も、客観的に捉えてひとつの作品にまとめてくれる人です。

──マスタリングと、それ以前に行なわれる「MIX」は、携わる人物が変わるだけで作業内容や使用する機材はあまり変わらないのでしょうか?

佐藤 以前は全く違う作業だったのですが、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)を使うようになってからは大きな差はないですね。一番大きな違いは「職業の違い」だと思います。MIXのエンジニアは、マルチトラックでたくさんの音をいかに音楽的に聴かせるかを考える職業。それに対してマスタリング・エンジニアは、2MIX(ステレオミックス)で、アルバムとして、シングルとして、いかに聴かせるかに重きを置いている職業です。そこで用いられているノウハウや技術は、実はそんなに大きくは変わらないと思います。

石川 ちなみにアナログレコード時代のマスタリングは、「カッティング」と呼ばれていたんですよ。

佐藤 そうそう。今は「マスタリング・エンジニア」と呼ばれていますが、昔は「カッティング・エンジニア」という名前だったんですよね。テープで届いた音源を、レコードの溝に掘り込むという職業だったので。

石川 深さとかを気にしながら、音が飛ばないようにね。厚みの全然違うものをひとつに揃える作業という意味で、今のマスタリングも同じですね。

佐藤 曲が切り替わったときに、いきなり大きな音が「バン!」と出ないようにするわけです。

──メディアの変遷に合わせて、作業内容が変わっているんですね。

佐藤 今回マスタリングをしてくれている小池光夫さんは、元々はレコーディングやミキシングのエンジニアだったんですよ。そこからマスタリング・エンジニアに転身されているんです。なので上位互換というわけではないんですけど、「ミキシングをした人をさらに上から見て、客観的に捉えるポジション」という立ち位置でもあります。サウンドトラックなんて特にそうなんですけど、クリエイターって暴走するんですよ(笑)。色んな方向に突き抜けたものを、グッとひとつにまとめてもらう。そういう意味で、我々にとっても非常に大事なポジションだと思います。

──雑誌の編集者のようなものですね。色々なライターの原稿を統一したフォーマットに落とし込むという作業は、我々の仕事に近いかもしれません。

佐藤 確かにそうですね! 「ここは活かそう」「ここは削ろう」という判断をお願いしている立場の人になりますからね。

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Q. 容量制限のないハイレゾのマスタリングは、どんな作業になるんですか?
A. 「良い環境で再生される」という前提で音作りをしています!

──CDのマスタリングはCDのフォーマットに落とし込むための作業が含まれていたわけですが、容量的な制限のないハイレゾのマスタリングは先程お聞きした「マスタリング・エンジニアの耳を通す」という部分以外ではどういった作業になるのでしょうか?

佐藤 まずハイレゾ音源は、ある程度良い環境を持っている人に向けたものになります。ハイレゾを買ってくれる人は前提として、良いオーディオやイヤフォン、プレーヤーなどを持っているわけです。だからハイレゾのマスタリングでは少しだけ音圧に余裕を持たせることで、より繊細に音を聴かせることができるようにしています。決められたサイズの器の中にギュッと押し込んでいたものを解放してあげることによって、同じ音作りの方向性の中でもより広い音像を体感できるようになるんですね。

──CDとハイレゾでは「聴いてくれる人の再生環境が違う」というのがまず前提になるんですね。

佐藤 そうです。そこに向けて作っています。だから「ハイレゾのフォーマットがこうだから、それに合わせて」というよりかは「ハイレゾユーザーは良いものを持っている」という考えで、再生性能が高いものを持っている人に向けたアプローチをしています。例えばiPhoneや付属のイヤフォンなどの普段MP3を聴いているような環境でハイレゾ音源を聴いたら、ちょっとしょぼく聴こえるかもしれませんね。

──聴く側の環境を信頼して作った結果、推奨されない環境で再生すると聴こえるべきものが聴こえなくなってしまうんですね。

佐藤 逆にユーザーの90%以上はCDを聴いてくれているので、CDはどんな環境で聴いても良い感じになるように作っています。「良い環境で聴けばより良く、悪い環境で聴いてもそれなりに」というのが目標ですね。そういう意味でCDはオールマイティーな音作りを心掛けています。

Q. ハイレゾを小さい容量に圧縮したものがCD音源なんですか?
A. 違います! それぞれに良いものになるように、ハイレゾとCD、さらにTVで流れるものも作り分けています。

──単純にハイレゾを圧縮したものがCD音源、ということではないんですね。

佐藤 CD用にMIXしたものを反映した上で、これからハイレゾ用マスタリングを行なうことになります。なのでハイレゾ用を作って、それをダウンコンバートしてCD用としているわけではありません。ハイレゾはハイレゾ用、CDはCD用として分けて作られているんです。手間が掛かってますよ(笑)。

──以前のQ&Aを踏襲しますと、ファンは両方買って聴き比べればいいわけですね(笑)。

佐藤 平たく言うとそういうことになります(笑)。そうしていただけると、とてもありがたいです。

──今回は劇伴をCDに収録するためのマスタリングに立ち会わせていただきましたが、TVで流れているBGMとCDでは違う音源が使われていたりするのでしょうか?

160930-mw-200001石川 今回、実は全く違うMIXになっていますね。TVで流れている劇伴は、TVで流す用のMIXになっているんですよ。

佐藤 はい。TV用の作業とCD用の作業を、全く別で行なっています。

──劇伴の業界で、そういったことは普通に行なわれているのでしょうか?

石川 普通はあんまりしませんね。通常はTV用に作ったものが、そのままマスタリングに回されてCDになります。TECHNOBOYSの場合はそれとは別に、CDで聴いたときに音楽だけで楽しめるようなトラックダウンをもう一度やっているんですよ。

──TV用の音源と、CD用の音源にはどのような違いがあるのでしょうか?

佐藤 TV用は、セリフや効果音が際立つように作っています。アニメの劇伴として作っているのがTV用のMIXで、サントラ用に作り直しているのはTECHNOBOYSのアーティストとしてのMIX、という意識ですかね。

Q. どんな基準でMIX、マスタリング・エンジニアを選ぶんですか?
A. ジャンルごとに適任者がいるので、作る音楽に合わせて別の方にお願いしています。

──収録される音楽によって、マスタリングの方向性は変わるものなのでしょうか?

佐藤 そうですね。アーティストによっても変わります。その辺りはマスタリング・エンジニアさんの年齢やキャリアにも、スタジオが持っている機材にも関わってきますね。レーベルのプロデューサーとしていくつかの選択肢を用意している中で、「テクノといえば小池さん」ということで今回は小池光夫さんにお願いしています。何せYMOの「RYDEEN」をMIXした方ですからね。YMOの1st、2ndアルバムをMIXした方なので、小池さんにTECHNOBOYSのマスタリングをやってもらうのは僕らにとってすごく重要な意味があるんです。

石川 小池さんによるマスタリングは、僕らの予想以上に音の良さを引き出してくれますからね。

──「テクノといえば小池さん」ということは、他の音楽ジャンルを作るときには別の方がマスタリングをされるんですか?

佐藤 例えばゴリゴリのロックであれば、そういう音楽が好きな他の方にお願いすることもあります。お願いしたいエンジニアさんが頭の中に5人程いて、それをジャンルに合わせて使い分けている感じですね。

──今回マスタリングを担当した、小池光夫さんとお仕事をするきっかけは?

佐藤 僕がYMOマニアなので、純粋に小池さんに会いたいなと思って「マスタリングをお願いします」と電話しました(笑)。それをきっかけに石川さんの『イノセント・ヴィーナス』のサントラも小池さんにマスタリングしてもらってますし、そんなのばっかりですよ。飯尾芳史さんも、寺田康彦さんも、僕から連絡して「レーベルの仕事ですよ~」と見せ掛けておいて、実はただ会いたいだけという(笑)。

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──ジャンルにおけるベストの人選をされているわけですね。ちなみに今お仕事をしている方を含めて、お好きなMIX、マスタリング・エンジニアの方はいらっしゃいますか?

佐藤 今回のサントラに参加していただいた方々がベスト・オブ・ベストなんですよ。ChouChoさんのボーカル曲のMIXエンジニアをお願いしたのが杉山勇司さんという方で、この方は東京スカパラダイスオーケストラやSOFT BALLET、最近だと寺島拓篤くんの楽曲のMIXをお願いした方です。ご自身で機材を作ったりしてすごくこだわられていて、日本のエンジニアの中でもトップクラスの方なんですよ。

──元々好みの音作りをしていた方とは、既にお仕事をされていることが多いんですね。

佐藤 そうですね。あとは寺田康彦さんも。上坂すみれさんや、TECHNOBOYSで作った「ウィッチ☆アクティビティ」は寺田さんにお願いしています。アルファレコード(YMOも所属していたレーベル)に在籍していた小池さんの同僚の方で、代表作でいうとイモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」のMIXもされています。僕らが今、手に入れて使っている古い機材も僕ら以上によく知っているので、正しい音の処理をしてくれるんですよ。

──リアルタイムでそれらの機材を使っていた方ですものね。

佐藤 「最新のレコーディングをしているのに、本物の80年代サウンドに仕上がる」というのは、寺田さんとTECHNOBOYSの組み合わせだから実現するものだと思います。それとおなじくアルファレコード出身の飯尾芳史さんですね。今回はED曲の「WHIMSICAL WAYWARD WISH」のMIXをしてもらいました。飯尾さんは、今でも坂本龍一さんの音源をMIXされている方です。最新かつ洗練された視野の広い感じがあって、寺田さんとも全く違ったサウンドにしてくれます。エレクトロニカ寄りなときのTECHNOBOYSのサウンドには、今どきの音になるという意味でピッタリですね。

──テクノに携わる方でもそれぞれの色があって、楽曲に合わせたエンジニアさんにお願いしているわけですね。

佐藤 一口に「TECHNOBOYSはテクノをやっています」といっても、ジャンルも年代も色々なテクノがありますよね。2000年代のものもあれば80年代のものもあるんです。80年より昔にテクノはあまりないですけど(笑)。なので、それに合わせてMIXしてもらっています。エレクトロニカの中でもクリアなものであれば、自分でMIXすることもありますね。

Q. 海外と日本で、MIXやマスタリングの差はありますか?
A. MIX技術に関しては、日本のエンジニアはトップクラスだと思います!

──音楽ファンの目線で、好きな海外のエンジニアなどはいますか?

佐藤 海外のエンジニアか……。実はそんなにいないんですよね。

石川 ボブクリ(ボブ・クリアマウンテン)とかじゃないの?

佐藤 ボブクリも「音が良い」というのは勿論わかるんですけど、「音が良い」という要素だけではあまりグッと来ないんですよね。グッと来るのは「曲が良い」の方が強いんですよ。ボブ・クリアマウンテンは例えば、ブルース・スプリングスティーンの『BORN IN THE U.S.A. 』やデヴィッド・ボウイの『LET’S DANCE』、ロキシー・ミュージックの『AVALON』や「おしゃれフリーク」のCHICなどのMIXをやっている方で、録音されている音はもちろん良いんですが、曲や音そのものの良さの方に耳が行くんですよね。エンジニアリング自体は、実は日本人の方が良いんじゃないかと思っています。録音に関しては向こうに分がありますが、バランスの取り方やMIXは日本の方が好みです。色々なCDでMIXの技術やセンスの部分を勉強しようと思うと、結果邦楽のCDばかりを聴いてしまうんですよ。それは自分の好みもあるとは思うんですが、そこまで洋楽に強く圧倒的な力を感じているわけではないですね。

石川 英語と日本語の差もあるしね。

佐藤 それもあるね。歌の発音もあると思うし、あとは再生するのも録音するのも電圧が違ったり。その辺りでも明らかに差は出るんですけど、MIXに関してはやっぱり日本。世界の中でもトップクラスの技術とセンスを持っていると思います。

──マスタリング技術に関してはいかがですか?

佐藤 マスタリングは海外ですね。ロンドンのサウンドマスターズ(The Soundmasters)というところに、ケヴィン・メトカーフ(Kevin Metcalfe)というマスタリング・エンジニアがいるんです。アンダーワールドやU2、ポール・マッカートニーをやっている方なんですけど、この人はすごかったですね。寺島拓篤くんのマスタリングをお願いしたんですが、もう「なんだこれ!?」と(笑)。

──もちろん良い意味でですよね(笑)。

佐藤 もちろんもちろん! 躍動感がすごくて、感動しました。

──それはどういった技術によるものなのでしょうか?

佐藤 それがね、わからないんですよ(笑)。もはや魔法です。小池さんももちろん素晴らしいエンジニアなんですが、目の前で作業してくれるので何をしているのかはわかるんですよ。ここをこうしたからこうなったんだ、こういうときはこうするんだ、すごいなーと見ていてわかるんです。でもケヴィンのマスタリングは目の前で見ていないからというのもあるんですが、上がってくる音源が「あれ、こんなMIX作ったっけ」みたいなものになっているんですよ。

石川 (音を)足されてるんじゃない?(笑)

佐藤 それくらいもはや違うものになってるんですよ(笑)。不思議ですね。もし万が一足されてたとしても、そこはセンスなので。そのセンスが優れているんだと思います。

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Q. マスタリングの差を感じるためにはどうしたら?
A. シングル版とアルバム版などで、同じ曲を聴き比べてみましょう!

──以前のQ&Aで「ハイレゾとCDの差を感じるためには」という話をしていただいましたが、「マスタリングの良し悪しによって生まれる差」のようなものを楽しむ方法はあるのでしょうか?

佐藤 皆さんのお手元に届くのは全てマスタリング済の音源なので、差を感じるというのは難しいですね。作っている側はMIX、マスタリングの前後の音を聴き比べられるんですが……。ただマニアックな楽しみ方としては、「オリジナルアルバムとベストアルバムで同じ曲を聴き比べてみる」というのも面白いかもしれません。

──そのふたつでマスタリングが変わるということですか?

佐藤 ベストアルバムを作るときは、ベストアルバム用のマスタリングをしているんですよ。マスタリング済のオリジナル音源を、そのままコピペしているわけじゃないんです。元のアルバムとしての流れから、ベスト盤としての流れをマスタリングで作り直しているんですね。MIXは一緒なんですけど。ということはマスタリング違いの別物が存在することになるんです。それを聴き比べるのは、マニアックだけど面白いと思います。

石川 シングルとアルバムでも違うよね。

佐藤 そうそう。実は違う音源なんですよ。

──確かにシングル版とアルバム版で、少し秒数が違ったりすることもありますね。

佐藤 そうですね。フェードアウトのタイミングを変えたり、無音の曲間を詰めたり伸ばしたり……。その時々に応じたアプローチをして、そこで生まれるのがマスタリングの違いになります。ちなみに『ラブライブ!』の初期5枚のシリーズは、24bit/48kHzのCDと同じマスターのバージョンと、MIXとマスタリングをし直した24bit/96kHzのバージョンと、さらにマスタリングをし直したバージョンと……それを反映させたCDのバージョンもあって、初期の10曲はMIX、マスタリング違いだけで10パターンくらい存在します。その辺りは、全部買っていただければ(笑)。

──聴き比べてわかる新しい発見がたくさんありますからね(笑)。

佐藤 まあそれはともかくとして、マスタリングの差に関しては「シングルとオリジナルアルバム、ベストアルバムで聴き比べる」が一番分かりやすいと思います。配信だとバージョンが同じことがあるので、CDで聴くのがオススメです。

石川 TM NETWORKなんて、MIX違いが山程ありますね。

佐藤 あれは全部のバージョンを揃えるのが大変です。出すたびに毎回違います。マニアはその微妙な違いを聴き比べるんですよ。

石川 イントロドンができるようになるよね。

佐藤 「これはシングル・バージョン!」みたいな感じでね(笑)。
Vol.2に続く)

パソコンへのCDの取り込み方法や再生環境に関する話題、サウンドトラック『Elektronische Musik für ILLYA』についてなど、まだまだ話は続きます。
教えて純之介さん!Lantis音楽プロデューサー佐藤純之介がズバリ回答!!「マスタリングって何ですか?」Vol.2の記事はこちら

 

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佐藤純之介
1975年大阪生まれ。YMOに憧れ90年代後期よりテレビや演劇の音楽制作の仕事を始める。2001年に上京し、レコーディング・エンジニアとしてJ-POPの制作に参加する。2006年、株式会社ランティスに入社。現在は音楽制作部のチーフ・プロデューサーを務める。『ひだまりスケッチ』『ラブライブ!』『ウィッチクラフトワークス』『トリニティセブン』『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』『おそ松さん』『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』『紅殻のパンドラ』『ラブライブ!サンシャイン!!』『フリップフラッパーズ』などTVアニメの音楽やμ’sChouChofhána、寺島拓篤、marbleTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDなどのアーティスト作品にプロデューサーやディレクター、エンジニアとして携わっている。

佐藤純之介氏が携わった作品のレビューはこちら

TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
トラックメーカー・フジムラトヲル(Ba/Syn/Vo)、作曲家・石川智久(Pf./Syn/Vo)、作詞家・松井洋平(Gt./Syn/Vo)からなるテクノユニット。現在まで2枚のオリジナル・アルバムをリリースしており、その活動範囲は海外にまで及ぶ。細野晴臣氏が音楽監修を務めた2007年の映画『EX MACHINA -APPLESEED SAGA-』を始めとして、『ウィッチクラフトワークス』『トリニティセブン』『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』『紅殻のパンドラ』『プリズマ☆イリヤ ドライ!!』など、数々のアニメ作品に劇伴や主題歌、キャラソン等の楽曲を提供。ユニットだけでなく、個人として作品に携わることも多い。宇都宮隆氏、松岡英明氏、浅岡雄也氏ら、時代を創ったボーカリストとのコラボレーション・ナンバーや、TVアニメ『おそ松さん』のエンディングテーマ「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」など、制作したそれらの楽曲は大きな話題を呼んでいる。

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