TVアニメ『フリップフラッパーズ』ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」 TO-MAS インタビュー Vol.2

lis_flipflap_02TVアニメ『フリップフラッパーズ』の劇伴と、EDテーマ「FLIP FLAP FLIP FLAP」を担当するTO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST=“TO-MAS”は、伊藤真澄、ミト(クラムボン)、松井洋平(TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND)の3人からなるユニット。それぞれが個別にクリエイターとして活躍する彼らが、何故「劇伴ユニット」を結成するに至ったのだろうか?今回は、“TO-MAS”始まりのいきさつから、『フリップフラッパーズ』の音楽におけるプロフェッショナルな制作過程まで、メンバー3人にたっぷりと話を聞いてみた。
インタビュー Vol.2では、Vol.1に引き続き劇伴の制作秘話や、パピカ(cv.M・A・O)&ココナ(cv.高橋未奈美)によるカップリング曲「OVER THE RAINBOW」のレコーディングなどについても触れている。

※TVアニメ『フリップフラッパーズ』ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」 TO-MAS インタビュー Vol.1はこちら

Interview & Text By 青木佑磨(クリエンタ/学園祭学園)
At Lantis

 

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TO-MAS feat. Chima『FLIP FLAP FLIP FLAP』のレビューはこちら

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TO-MAS『TVアニメ『フリップフラッパーズ』オリジナルサウンドトラック Welcome to Pure Illusion』のレビューはこちら

 

そうですね。超絶プロフェッショナルな投げっぱですよ(笑)

──それぞれがキャリアを積んできているからこそ、ゴールを定め過ぎなくても「きっと誰かが面白いゴールに気付いてくれる」というような信頼が生まれるんですかね。

松井 たぶん信頼感というか、まず最初からお互いにフランクな感覚があるんです。普通の人だったら「その2MIXをよこせ」って、怖くて言えないですよ(笑)。これがたまたま揃った集まりだったら絶対やりませんけど、僕らはもうTO-MASというひとつのユニットになってしまっているので、思いついたことは何でもやろうと。やって駄目だったらノーと言ってくれる人たちだし、面白かったら受け入れてくれますしね。

──そういった遠慮や垣根が全くないんですね。

松井 その垣根は最初から、『ももくり』のときからないですね。

ミト 多分それは、劇伴ユニットだからでしょうね。確たるものとして、コンテンツという中心点があるじゃないですか。ということは、極論を言ってしまうと最終的にはそこに寄りかかることができるんです。自分たちのアイデンティティがどうかというより、まずコンテンツに作用しなければならないと。でもこのユニットに関しては、そういう風に寄りかかるだけでもオリジナリティーが出ちゃうくらい汁の濃い人たちなんですよ。だからあんまり考えないでいる方が、口から出てないのに耳から漏れてるみたいな状態になるんですよ(笑)。

松井 ただ真澄さんとミトさんが、作品側が求めているものを渡そうとしていたとは思えない(笑)。

ミト いやいやいや、何を仰いますやら。

松井 「作品の世界観をもっと広げてやろう」とか、「向こうが想像していた通りのものを、そのまま渡すことだけは絶対にしたくない」とか、そういう気持ちを感じていましたよ。

ミト そうですね。超絶プロフェッショナルな投げっぱですよ(笑)。

──「完璧に相手が受け身を取れるように、しかしできるだけ遠くまで投げる」というような(笑)。

ミト そうそうそう、プロレスと同じですよね。大怪我をさせずに、どこまで綺麗に対戦相手に技をかけられるかという勝負ですよ。でもこれが、UWFかWWEかで全然違う訳じゃないですか!(笑)。そのコンテンツに対してちゃんと応えていくというのが、私たちのできることですから。そういった意味で、中心があるからこそ自由にやらせてもらっていますね。

皆が引き出しを開けたまま閉めないみたいな状況になりました(笑)

──楽曲の幅が多様になっても、最終的には作品を軸に全体がまとまる訳ですね。

ミト (TO-MASの資料を見つつ)そもそもTO-MASが今までに劇伴を担当してきた3作品の、CDジャケットの並びが既におかしいでしょって話ですよね。

──『ももくり』『彼女と彼女の猫-Everything Flows-』『フリップフラッパーズ』……確かに全く雰囲気の違った3作品で、劇伴担当が同じとは思えないですね。

松井 でも『ももくり』と『フリフラ』の間に『彼女と彼女の猫』が入ったのは、ある意味僕らにとっては僥倖でしたね。『ももくり』でベーシックなものをやったあとに、『彼女と彼女の猫』ではミニマムに、最小限の人数で作ったんですよ。このほぼ3人だけでの作業で、意外と色んなものが見えたんです。

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TVアニメ『彼女と彼女の猫 -Everything Flows-』オリジナルサウンドトラック

ミト 『彼女と彼女の猫』は、本当に人が入ってないもんね。

伊藤 そうそう、弦が入っているくらいですね。

──そのときは「音数の少ないものを」というオーダーだったのでしょうか?

伊藤 そうですね。静かなものをお願いされました。

松井 世界観に合わせて、コンテンツに寄り添って、というのはさっき言った通りです。ただ「コンテンツに合わせた、静かなもの」というだけで終わっていいのか、という部分はちゃんと表現できていると思います。

ミト 花澤香菜さんが歌う、キャラソン的な歌モノもやりましたしね。

松井 そうですね。『彼女と彼女の猫』で、色んなことが整理できました。それで次に『フリップフラッパーズ』の依頼が来たときに、これがものすごい作品だったんですよ。色々な曲を書かなくてはならないから、皆が引き出しを開けたまま閉めないみたいな状況になりました(笑)。その挙句、レコーディングに3日かかりましたね。

ミト あれはカロリー高かったなあ……。普通の劇伴レコーディングはだいたい半日か、長くても1日ですからね。

──生楽器などの録音に、3日掛かったということですか?

松井 はい。弦楽器だけじゃなく、色んな楽器がありましたからね。これから作品で流れたり、クレジットを見てもらえればわかると思いますが、「こういう人が来るんだ」と思ってばかりでした。

伊藤 お祭りみたいでしたよね。3日間お祭り騒ぎでした。

──珍しい楽器も多く使われているのでしょうか。

松井 ええ、普通は入らないような楽器が入ってます。

伊藤 特にミトさんがお呼びした方々は、非常に面白いですよ。

ミト ああ、「ホーメイ」(※ホーミー、フーミーとも)ですかね。ホーメイはモンゴルなどに伝わっている、声に倍音があってひとりで2声、3声に聴こえる歌唱法です。それの歌い手がたまたま知り合いでですね(笑)。

──たまたまよくいましたね(笑)。

ミト たまたまホーメイの人が知り合いでして、その2人を呼びました。押山清高監督が面白い方で、結構トライバルな楽器がお好きなので、自分で口琴を入れたりとか「これにはディジュリドゥ(※オーストラリア大陸の先住民・アボリジニの管楽器)を入れて欲しい」とお願いされたりしましたね。この面子だからハマりましたけど、他の現場でやったら事故が起きますよ(笑)。

監督の話を1~2時間も聞いて、「やっぱりわからない」というのは後にも先にもないんじゃないかな(笑)

──ちなみに押山監督とは、事前に「こういった作品なので、こういった曲を」というような打ち合わせはあったのでしょうか?

161101-mw-202001ミト それがすごかったんですよぉーー!!(笑)。すごかった。シナリオが6、7話くらいまであったんですけど、それでもわかんなくて。

伊藤 人間関係がまずわかんなかったよね。

ミト 最終稿のプロットもいただいたんですけど、読んでもわからない(笑)。もはや全てを放棄しようかと思ったときに、監督が「じゃあ改めて1から」って説明を始めてくれたんですよ。でもその「1から」がプロットさえも飛び越えて、全然違う縮尺になってるんです。A4の用紙に2mmくらいの文字をびっちりメモして、それでも足りないくらい書き込みましたよ(笑)。

松井 キャラの相関図を書いたりしながらね。「これがこいつで、これがこうつながってて……」「えっ、なんでこれとこれがこうなってるの?」みたいな感じで(笑)。

ミト 挙げ句、話を聞いてた音響監督が「えっ、それってそうだったの?」って言い出したりね(笑)。

──それは今までの劇伴経験の中でも珍しい出来事なんですよね?

ミト レアケースだと思う。監督の話を1~2時間も聞いて、「やっぱりわからない」というのは後にも先にもないんじゃないかな(笑)。

──1、2話を見て抱いた自分の感想が、間違っていなかったようで良かったです(笑)。

伊藤 多分しばらくわからないと思いますよ(笑)。

「そっか、ピュアイリュージョンってこういうことか」と思いました(笑)

松井 きっと監督の中でも、僕らの中でも、作っている内に成長していったコンテンツなんだと思います。最初は僕らも手探りでしたからね。まず真澄さんがテーマになる曲を作ってくださって、それが取っ掛かりになって「真澄さんがこう来るなら僕はこうしよう」「ミトさんはこういうのを作るのか」という詰将棋のような状態になったんですよ。

──音像的にも重厚な管弦楽にデジタルサウンドが重なったり、不思議な印象を受ける楽曲が多かったです。こういった楽曲も、それぞれにアイデアを肉付けしていく形で作られたのでしょうか?

松井 普通の将棋は81マスで、その中で駒を打つものじゃないですか。なのにミトさんが桂馬を盤の外に打つんですよ(笑)。

──別の競技が始まってしまいましたね(笑)。

ミト 知らない内に盤が121マスとかに広がってたりするんですよね。

松井 「そっか、ピュアイリュージョンってこういうことか」と思いました(笑)。じゃあ僕もこっちに飛び出そうと思ったら、今度は真澄さんが真上に行ってたり……。

ワクワク感というか「ここから始まったらどこへでも行ける」という感じがしたんですよ。

──作品の説明を受けた結果、楽曲制作においても枠に収まる必要がなくなったんですね。

松井 そうですね。想像の枠が広がったというか……。

ミト 広がったというか、「もう何でも良いんだな」ということがわかった感じですね(笑)。

──わからない部分が多いながらも、劇伴の軸として「こういうサウンドにしていこう」というのは何をきっかけに定まったのでしょうか?

松井 それは実は、真澄さんが予告用に作っていたものが軸になっているんですよ。

伊藤 予告PV用の音楽を私が最初に作っていて、それが柱にはなっていたかもしれないですね。

松井 それがすごく世界観を表現していて、ワクワク感というか「ここから始まったらどこへでも行ける」という感じがしたんですよ。

伊藤 そんなに褒めていただいて、ありがとうございます(笑)。

松井 いやいや、本当に素晴らしかったんですよ。主人公のひとりであるパピカがトンネルから抜けて外へ飛び出していく感じと、真澄さんの曲が合わさって、本当に「どこへでも行ける」という感覚があったんです。それがあるから、振り切っても帰るところがあると思えるんですよね。

ある日、朝起きたら曲ができてました(笑)

──軸となる音楽は、制作の起点の段階からあったんですね。

松井 もちろんそこから色々といじりましたけどね(笑)。

ミト まずスタート地点であれだけ風呂敷を広げているので、いくらだって受け入れてもらえるだろうなと思いますしね。パノラマチックなオーケストレーションと、生演奏と、打ち込みもあって……じゃあ全部アリじゃないかという話になる訳です。

──「TO-MASならできるだろう」という期待もあって、多ジャンルに渡るオーダーもあったのではないでしょうか。

161101-mw-200001松井 TO-MASを何だと思ってるんでしょうね(笑)。

ミト 何でもできると思うなよ!(笑)。

伊藤 できることしかできないよねえ(笑)。

──劇伴に使われている1曲の主旋律とEDテーマのメロディが同じだったり、「FLIP FLAP FLIP FLAP」のカップリングに収録されるパピカとココナによるキャラソン「OVER THE RAINBOW」のメロディも、1話より劇伴として登場していますね。これらは劇伴と歌の、どちらを先に作られたものなのでしょうか?

伊藤 EDテーマに関しては、歌のメロディを意図的に劇伴に使いましたね。「OVER THE RAINBOW」は劇伴が先にあって、そのメロディを松井さんがヒュッとくっつけてくれました。

松井 ミトさんが作った曲を何曲かピックアップして、「これつながるな」と思ったやつをつなげて、それで歌詞を書いちゃって、ミトさんに渡しましたね。ミトさんのリクエストにいくつか応えて、最後に真澄さんに上モノを入れてもらって……。

伊藤 「じゃあ弦とか木管楽器とか入れまーす」って。

──想像を絶するアクロバティックな制作過程ですね(笑)。ミトさんとしては、全くそんなつもりで作った曲ではなかった訳ですよね。

ミト ある日、朝起きたら曲ができてました(笑)。ただ今回の作品は特に、劇伴のメロがしっかりしていないと絵に負けちゃうと思ったんですよ。劇伴にも色々あって、ふわっと柔らかくオブラートに包むような音楽がハマることもあるんですが、今回はあまりにも漠然とし過ぎているんです。「ボヤけたもの」に「ボヤけたもの」を重ねるのはちょっと違うなと思うので、メロもリズムもしっかりしたものを作って、こちらでストイックに的に当てていくようにしていましたね。

松井 それはお互いに、3人の中でありましたね。

ミト だから色んな意味で、今回はメロディが太い曲がいっぱいあると思います。そういう曲が書けているなとは思っていたのですが、よもや朝起きたらそれが歌モノになっているとは(笑)。なんとなく「これとこれを合わせたら面白いかもね」くらいのことは言ってはいましたけど……。

松井 「じゃあ合わせてみよう」と。本人に伝えずに(笑)。

伊藤 知らない間につながってましたね。

だからTO-MASって全員日本人なんですけど、出身国が違う感じがしますよね。

──お互いに驚かせ合いのような制作過程なんですね。

ミト 松井くんは楽器を触れる人じゃないですけど、オーディオを切って貼ってという作業ができる人なんですよ。

松井 「これテンポ違うわ」「これキー違うわ」と思ったら、「じゃあテンポとキーを合わせよう」「こぼれたから合わせよう」と(笑)。

ミト それが彼のTECHNOBOYSたる所以である、マッドサイエンティックなエディット(編集)なんです(笑)。でも歌モノとしてちゃんと成立している上で、私が作った劇伴のメロからは離れていかないんですよ。

松井 だからTO-MASって全員日本人なんですけど、出身国が違う感じがしますよね。文化が違うというか。真澄さんは伊藤真澄という国から来て、ミトさんはクラムボンという国から来て、僕はTECHNOBOYSという国から来て、ここで出会ってお互いに何か面白いことができないかと話し合って。それぞれが「うちの国ではこういうノリ方するんだよ」というのを受け入れてくれるんですよね。

──確かに物作りの文化圏がそれぞれに違うんですね。

伊藤 だけど、最初からすごく自然でしたよね。

松井 お互いのことを全然知らないからこそ、できることだと思うんですよ。ちょっとでも自分と相手の文化圏が被っていると、「ここは譲れない」というのが出てきてしまうじゃないですか。でもこの3人は、その譲れない部分が全く被らないんですよね。

ミト そうだね。今のところはぶち当たったことはないですね。

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松井 せいぜい「行き過ぎる部分をどこで止めるか」くらいですね。そうそう、劇伴制作の中で「OPテーマ(※ZAQの「Serendipity」)のインストを作る」という作業があったんですよ。それで「ミトさんのギターと真澄さんのピアノでシンプルに作りましょう」という話になって、そしたらふたりがその場で曲を聴いて覚えて、すぐに演奏を始めるんですよ。

伊藤 譜面もなかったよね。

ミト なかったですね。

松井 それでできちゃうんですよ、この2人は。でも唯一の問題が、2人ともその演奏を延々と続けてるんです(笑)。誰も止めないんで。「おいおい……いい加減、そろそろ終わりにしましょうよ!」ということで、僕が2人を止めにいくんです。

伊藤 すみません(笑)。あれは松井さんが指揮してくれましたね。

──それでもう、アレンジの方向性が固まってしまうんですね。

ミト 全体で20分くらいですかね。5分で全員聴いて、「メロわかる?」「わかんなかったらわかんないでいいんじゃない?」みたいな感じで(笑)。演者として即興セッションのスキルもあるし、それをディレクションしてくれる役割として松井くんもいてくれる。だからリアルタイムの、ジャム・セッションでの制作もいけちゃうんですよ。もちろんスコアも書けますしね。

松井 今回のレコーディングに至っては、真澄さんのピアノを録って、そのトラックを僕がもらって、次の曲のレコーディングの最中に同時進行で編集したりしていましたから。おそらく普通はしないですよね。

ミト それでできあがっちゃうんだからすごいんですよねえ。

しかもまた、見えにく~いパスをしてくるんですよ(笑)

──TO-MASの皆さんの制作における方法論などを伺うつもりで来たのですが、全ての回答が想像を絶していて言葉を失っております(笑)。

ミト 普通は無理ですよ。

松井 でもやっていてあんまり違和感はなかったですよね。

伊藤 全然なかったですね。でも確かにすごいかもね。

松井 何かやったときに「面白いと思ってくれる」か「全部拒絶される」かの2択だったら、皆「面白いと思ってくれる」人だったってことですよね。

161101-mw-204001伊藤 いつも褒めちぎり合いながらやってますからね(笑)。「最高ー!!」「素晴らしい!!」って。

松井 それがある意味で一番出たのが、EDテーマじゃないですかね。3人の面白いと思うことがまとまっていると思います。「FLIP FLAP FLIP FLAP」は音の方法論を皆で出し合っていて、「OVER THE RAINBOW」はアイデアの方法論を全員で出し合ったイメージがありますね。だから後者に関して僕は「音は入れなくていいですよね」という姿勢でした。完成した音に対して何もアプローチする必要がないときは、あえて動かないこともあるんです。

──「メンバーだから」と、無理に自分のエッセンスを足すということはない訳ですね。

松井 「自分も入れなきゃ」とは思わないですね。例えばTO-MASとしてミトさんが作ったものに僕と真澄さんが「何もいじるところがない」と思ったら、おそらく何もしないですよね。

──その上で先程仰っていたように、「意図的に完成させずに持っていく」ということもあると。

伊藤 その通りです!

松井 「パス!!」って。

ミト しかもまた、見えにく~いパスをしてくるんですよ(笑)。

松井 「こんなところからボールが来るのかよ!」というね(笑)。

──「自分以外が遊んでくれた方が楽しくなりそう」という狙いがあるのでしょうか?

伊藤 そうそうそう。自分だけだと小っちゃい世界になっちゃうじゃないですか。それを広げてもらえるんですよ。

「にしても!(怒)」って書いておいてください(笑)

──「OVER THE RAINBOW」のお話にもなりましたが、パピカ役のM・A・Oさんとココナ役の高橋未奈美さんが参加されたこちらの楽曲のボーカル・レコーディングでは、何かTO-MASならではのディレクションなどはあったのでしょうか?

松井 ……ややこしいコーラスをつけて怒られました(笑)。

ミト それな!(笑)。ボーカルが歌をメインに活動している方ではないので、それなりのエクスキューズがあった上でレコーディングに臨んだ方が事故が起こりにくいんですよ。でも松井くんは、ド頭から大事故が起こるような難解なコーラスを付けてきたんです。

松井 あっはっはっは(笑)。

ミト で、彼は「まあイケるっしょ」って言いながらプレイバックをたったの1回だけ聴かせて、「このラインなんで、じゃあ行きましょう!」って進めようとするんです。絶対無理ですよそんなの!(笑)。キャラソンというのは特に、声優さんへのエクスキューズもありつつお互いに支え合って作っていくんですよ。そうすることで良いものになることが多いんですよね。

──相手は歌が本業ではない訳ですからね。

ミト ただし、これが凄いのですが、自分は声優さんを見くびってはいないかという風にも思わせてくれたんです。最初からできないと思って突き放してはいないだろうかと、気付かせてくれた部分もあった……にしても!(笑)。

一同 (笑)。

ミト 「にしても!(怒)」って書いておいてください(笑)。普通はステイで、同じ音をずっと歌っているだけでもちゃんとハモリになるんです。でも松井くんの作るコーラスはめちゃくちゃ動くんですよ! 上とか下とか、長4度や短6度を超えるのとか、声優さんじゃない普通の歌い手でも難しいですよあんなの。それを1回聴かせて「だいたい覚えましたねー?」って、「覚えるわけないだろー!!」と(笑)。

松井 イケるかなーと思っちゃったんですよね(笑)。

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ミト 「誰でもTECHNOBOYSじゃねえんだよー!」ってね(笑)。でもこれはこれで面白いことですよ。ディレクションするのなんて普通はひとりですけど、こちらは3人いる訳ですから。私が「これくらいのピッチだったら大丈夫かな」と思ったら、真澄さんは「いや、まだまだイケるでしょ」って言ったり。

──歌い手のポテンシャルを引き出せる皆さんだからこそ「もっとできる」と、さらに上を狙ってしまうのかもしれませんね。

ミト それにしてもM・A・Oちゃんと未奈美ちゃんは、2人ともスペックが高かったなあ。M・A・Oちゃんとは他でもお会いしてますけど、最近また格段にレベルが上がってましたよ。

松井 いやー、上手かったですねえ。

伊藤 ねえ。すぐに終わっちゃった。

ミト 未奈美ちゃんはコーラスやハモリも上手かったので、音感のセンスが良いんでしょうね。

──結局松井さんが作ったコーラスはそのまま使われているんですか?

ミト もちろん使われておりますよ。でもコーラスのラインに関しては、今後は1回チェックを入れようかな(笑)。

松井 今回も一応譜面は出したんですよ!(笑)。

ミト 聴いた時点では気付かなかったんですよ。短6度も超えてるなんて思わなかった。普通は上と下がそんなに離れていたらパートをふたつに分けるんですけど、ひとつのコーラスにまとまってるし……。

──上ハモと下ハモを重ねて3声にするのではなくて、ひとつのコーラスが上と下に動くんですか。それは難しそうですね。

伊藤 やっぱり聴いた感じが自然だったんですよ。だから違和感がなかったんじゃないかな。

松井 僕は「歌は続けて歌ってほしい」という気持ちがあるんですよ。「ここは弦の音と当たるから変えよう」というのもあったりして、その辺りは現場での変更もありましたね。そのときはまだ弦は録っていなかったんですけど、真澄さんには先が見えていたので。

ミト そういう調整は、私や真澄さんはよくやっていることですからね。和声はこちらで確認して、そこに自由に当てていく松井くんがいて、だからやっぱり独特な個性になるのかもしれません。

何故ならハイレゾでは「宝探し」ができるようになります。

──「リスレゾ」はハイレゾ音源を皆さんにご紹介するサイトになります。「FLIP FLAP FLIP FLAP」や劇伴をハイレゾで聴かれる方への、ハイレゾならではの聴き所などがございましたらお聞かせください。

松井 TO-MASは僕らがそれぞれに普段やっている音楽よりも、色々な音や要素が入っています。それがすごく綺麗にCDの中にまとまってはいるんですけど、一度ハイレゾでも聴いてみてもらいたいですね。何故ならハイレゾでは「宝探し」ができるようになります。

伊藤 「宝探し」! 良い表現ですねえ~!

ミト もうここで〆た方が良いんじゃない?(笑)。

松井 「24bit/96kHz」というのは良いバランスでフィールドが広がっているので、そのまま宝探しのフィールドが広がったと思ってください。そして「32bit/96kHz」では、「やっぱりこの音が入っていたんだ」「この音とこの音がつながってこう聴こえていたんだ」という、答え合わせができます。

──ひとつひとつの音が、個別に聴こえやすくなるんですね。

松井 はい。真澄さんを解析したり、ミトさんを解析したり、僕のやっていることを解析したり、Chimaさんの声を追い掛けたり。そういう部分がとても面白くなると思います。

伊藤 以上です! 完璧です!

ミト もう喋ることがないよ!(笑)。

真澄さんから「大丈夫、私もだから」って返ってくるんですよ(笑)

──最後に、今後のTO-MASについて予定や展望などがございましたらお聞かせください。

松井 せっかくアーティスト・デビューしたんですから、どんどん歌も出したいですね。

伊藤 そう、歌モノをやりたい!

ミト 目標として、今後はTO-MASで劇伴チームとしてのライブをやりたいと話しているんですよ。

伊藤 ……あれ? 来年あるって聞きましたよ。

ミト えっ!?

松井 おいおい聞いてないよ!

ミト ちょっと、スケジュールは!?(笑)。

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松井 もう、電波少年スタイルやめようよ!(笑)。でも「何ができるかわからないから、やめておこう」というようなユニットじゃないので、「何ができるかわからないから、何でもやらせてみよう」という感じなんでしょうね。

ミト 20~30代前半の子がこのスペックのプログラムを投げられたら、多分自爆すると思います。たまたま私たちみたいな中堅だからできる、無茶振りの遊びなんですよね。

──自由度の高さに耐えられるだけのキャリアがあるということですもんね。

ミト 大人の遊びですよ。神々の遊びですよ。

松井 自分たちのことを神々って言っちゃったよ(笑)。

ミト 暇を持て余した神々の宴です(笑)。

松井 ミトさん、暇ではないでしょ!(笑)。

ミト でもTO-MASをやったことによって持って帰れる部分も、皆あるんじゃないですか?

松井 うんうん、だいぶありますよ。

ミト だってもう『フリップフラッパーズ』の劇伴終わってから他の仕事が楽になった錯覚がして仕方がなかったですもん(笑)。

松井 ミトさんは、物理的に真澄さんのスコアを持って帰るんですよ。そうやって真澄さんを研究した結果、まだ見えない部分があると言ってますね。

ミト スコアが好きなんですよ。まだ自分で書き始めて2、3年しか経っていないので、真澄さんのスコアは勉強になります。私は昔から真澄さんのCDを買っている人間なので、それをスコアで見れるなんて恵まれてますよ。元々ただのいちファンですからね。

伊藤 ミトさんは、スコアを見ながら一杯飲むっていうのが趣味なんですよね。

ミト スコアと歌のディレクションの紙を見ながら飲むのが大好きなんですよ。赤線とか青バツとかが書いてあるのを見ながら、「このとき大変だったなあ」と思い返して飲むんです。そういうドMな神々の遊びです(笑)。

──「ここは良かった」と酔いしれる時間ではないんですね(笑)。

ミト 私たちはやっぱり、ときには辛いものも食べなきゃいけないんです。辛いものを食べると、辛いものの美味しさもわかる訳ですよ。この歳になってくると、もう感覚が曖昧だから(笑)。だからもっと刺激がないと駄目なんです。

松井 今回はすごい刺激物が来ましたからね(笑)。

ミト 強烈ですよ。だからもう本当に『フリフラ』が終わったあとの仕事があまりにもストレスなさ過ぎて、「今日は休日なんじゃないか」と思いながら仕事してましたよ。ずっとブラックサンダーを食べてるような感じでした(笑)。

松井 『フリフラ』をやっているときに、ド深夜に真澄さんから来た「がんばりましょう」というメールが忘れられないです(笑)。

ミト 私が「間に合わなさそうです」ってメールを送ると、真澄さんから「大丈夫、私もだから」って返ってくるんですよ(笑)。

──「やるしかないんだから、やりましょう」と。

伊藤 そう、「落ち着いて急ぎましょう」って(笑)。

ミト この台詞が言えるのは大人だけですよ(笑)。

松井 本当に、皆『フリップフラッパーズ』を見た方が良い。

ミト 死ぬ気でやってるから~!(笑)。

松井 サントラも来年1月に発売になるので、そちらも本当に聴いてほしいですね。こんなものがひとつのユニットから出てくる音楽なんだって、きっと驚いてもらえると思います。

 

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TO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST
『シゴフミ』『IS<インフィニット・ストラトス>』『境界の彼方』など数多くの劇伴を担当し、上野洋子とのユニット“Oranges & Lemons”(TVアニメ『あずまんが大王』のオープニングテーマとなった「空耳ケーキ」を手がける)のメンバーとしても知られるシンガーソングライター、伊藤真澄。映画『心が叫びたがってるんだ。』の劇伴やTVアニメ『終物語』のオープニングテーマ作曲など、アニメ作品へ数々の楽曲提供を行なっているクラムボンのミト。『ウィッチクラフトワークス』『トリニティセブン』『プリズマ☆イリヤ ドライ!!』などアニメ作品の劇伴や主題歌、キャラソン等の楽曲の制作を行ない、作詞・作曲・編曲を手がけたTVアニメ『おそ松さん』のエンディングテーマ「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」も大きな話題を呼んだTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのメンバーであり、声優やアニメ作品の作詞家としても活躍をしている松井洋平
この3人からなる劇伴ユニットが“TO-MAS”。正式名称は“TO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST (トーマス サウンドサイト フローレセント フォレスト)”。2015年9月に結成され、TVアニメ『ももくり』『彼女と彼女の猫 -Everything Flows-』の劇伴、『ラブライブ!The School Idol Movie』Blu-ray特典曲「これから」などを手がけている。2016年10月より放送されたTVアニメ『フリップフラッパーズ』の劇伴を担当。またヴォーカリスト・Chimaをフィーチャーリングしたエンディングテーマ「FLIP FLAP FLIP FLAP」も手がけている。

 

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