ALI PROJECT / 愛と誠〜YAMATO & LOVE×××

ALI PROJECT25周年記念のリリース第3弾。「愛と誠」「勇侠青春謳」に代表される気高く勇ましい〈大和ソング〉や、「胡蝶夢心中」「共月亭で逢いましょう」など美しい〈ラブソング〉を収めた全32曲。書き下ろしとなる新曲「花と龍」も収録。

 

2017年にメジャーデビュー25周年を迎えた“ALI PROJECT”。これを記念して3月にはシングル「卑弥呼外伝」を、6月にはベストアルバム『血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror』を発表。

「卑弥呼外伝」のレビューはこちら

『血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror』のレビューはこちら

そして、このアニバーサリー・プロジェクトのリリース第3弾がベストアルバム『愛と誠~YAMATO & LOVE×××』となる。『血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror』はランティスからのリリースだったが、今回はフライングドッグからのリリースで、前回同様、徳間ジャパンなどレーベルの枠を超えた選曲となっている。

『血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror』は「ゴシックロリータ」「ゴシックホラー」とふたつのテーマを設けて曲が編まれていたが、『愛と誠~YAMATO & LOVE×××』でもこの構成を踏襲。今作では、20周年を記念したシングル・コレクション『快恠奇奇 ALI PROJECT Ventennale Music,Art Exhibition』で提示した「JAPONISME」を拡張した《YAMATO》、情熱的なラブソングを収めた《LOVExxx》のふたつで、前者をM-1~M-16、後者をM-17~M-32に収録。CDでは2枚組となる、ヴォリュームたっぷりな選曲となっている。

《YAMATO》

アルバムの1曲目を飾るのは「愛と誠」。ALI PROJECTの楽曲においては、いわゆる〈大和ソング〉として知られる人気曲だ。勇ましく気高い心、一途に捧げられる愛。このベストアルバムのテーマをそのままに表わした言葉が胸を熱くさせる。「愛と誠」に続く〈大和ソング〉となる「勇侠青春謳」は、2006年に放送されたTVアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』のエンディングテーマとして使用された。複雑に変化を続けるリズムやメロディーと、それらに絡むヴォーカルの語調が独特で、強く印象に残る曲だ。一聴でも刺激的だが、聴くたびに底知れぬ深みへとずぶすぶと沈んでいくような中毒性がある。歌詞はやや古風な表現をも用いているが懐古的ではなく、むしろ現代へと大和なる精神を結ぼうとするものであり、「神風」の“ありふれた愛の歌が 伝えるのは虚ろな正義で”や、「陸と海と空と」の“飾り立てをせず 偽りも持たず 現代(いま)の自分へ”など、その試みは積極的に行なわれている。

京都 総本山・聖護院門跡にて撮影された「愛と誠」のミュージックビデオも雅びである。

「勇侠青春謳」のようにアニメ作品に使用された楽曲をほかにも選曲している。2003年に放送されたTVアニメ『AVENGER』の挿入歌「少女殉血」は、サウンドトラック『AVENGER O.S.T.』に収録されている。ALI PROJECTはこの作品ではオープニングテーマ「月蝕グランギニョル」、エンディングテーマ「未來のイヴ」、また劇伴を担当。サウンドトラックにはこれら主題歌をはじめ、「MOTHER」「繭」「地獄の季節」など6曲のヴォーカル曲を収録している。『ノワール』『AVENGER』の真下耕一監督による2006年のTVアニメ『.hack//Roots』からは、最終話「Determination」で使用された「KING KNIGHT」を収録。ALI PROJECTによるエンディングテーマ「亡國覚醒カタルシス」は、ほかベストアルバムにも度々収録されているが、「KING KNIGHT」は今回初となり、こういった選曲もファンにとってはうれしいところ。荘厳な雰囲気からバロックオペラへとイントロの演出が心憎い。

「Valkyrja~騎士乙女」は、アニメ関連の楽曲の中ではちょっと変化球といったところだろうか。原曲「騎士乙女」は、2009年1月にリリースされたシングル『裸々イヴ新世紀』のカップリングとして収録。表題曲はTVアニメ『宇宙をかける少女』のオープニングテーマで、「騎士乙女」も番外編となる第9話『Q速∞』のエンディングテーマとして使用された。唖然とするような物語の結末から続く、雨に濡れるグラウンドを映すエンディング映像を背景に、「騎士乙女」は主人公たちの心の痛みを代弁するかのように奏でられた。「騎士乙女」はのちにストリングスによるアレンジでアルバム『Gothic Opera』に『Valkyrja~騎士乙女』として収録。70年代ハードロック風の原曲からスピードをやや緩め、重厚な弦楽合奏にて“果てしない宇宙”を描く。

ビクター~フライングドッグにてアニメ関連の楽曲を数多くリリースしているALI PROJECTだが、2002年にはオリジナル・アルバム『EROTIC & HERETIC』も発表している。このベストアルバムには「戦争と平和」を《YAMATO》サイドに収録。ヨーロッパの童話をイメージさせるポップなサウンドに合わせて、戦火に抗う愛の強さを歌っている。アグレッシブな意思を前面に押し出した楽曲だけでなく、《YAMATO》サイドの終盤には「見ぬ友へ」「この國の向こうに」「鎮魂頌」など、「戦争と平和」と同じく平和の尊さを訴えかける曲が並ぶ。なおこの3曲のどれもが10曲入りのオリジナル・アルバムの9曲目に収録されている。〈大和ソング〉となる「愛と誠」「神風」「陸と海と空と」「絶國TEMPEST」「青嵐血風録」「永久戒厳令」が、どれもオリジナル・アルバムの1曲目となっていることもあり、アルバムにおける曲それぞれの意味や役割といったものが改めて理解できる。

今回のベストアルバムに収録されている新曲はM-11の「花と龍」。タイトルでふと任侠映画を思い出してしまったのだが、“待っておくんなさい そこの兄(あに)さんよ”で始まる歌詞も、そんなイメージを膨らませてくれて、あながち間違ってはいないかも。アリカの姐さん、藤 純子って具合なのよ。男も女も惚れるきりっとした潔い歌声が、エスニックなエレクトロニック・サウンドに華麗に舞い散る。昭和/ワールド/電子音楽という折衷主義もアリプロならでは。妖しく艶やかな楽曲に強く惹きつけられる。

《LOVExxx》

CDではDisc2の1曲目となるM-17は、2007年のアルバム『Psychedelic Insanity』に収録されている「胡蝶夢心中」。プリミティブなリズムの上に、うたかたの生に燃え盛る恋の喜びと哀しみを綴る。乾いたブレイクビーツとともにピアノやアコースティックギターの音色がしめやかに憂いの情景を彩る「遊月恋歌」、ジャズ・ナンバーを思わせる洒脱な楽曲の雰囲気が心地よい「BAR酔芙蓉へどうぞ」、遠い日の面影をなぞるようにメロディーがロマンチックに流れゆく「真夏の憂愁夫人」など、こちらもまた様々なスタイルで愛のかたちを描いている。

『血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror』と同様に、『愛と誠~YAMATO & LOVE×××』にもストリングス・アルバムからの楽曲を収録している。「蜜薔薇庭園」はジャケットの裏側にワーグナーの楽劇と同じ原題が記されている『神々の黄昏』から、「修道院の廃庭にて」は『椿姫』にインスパイアされたと思われる『Violetta Operetta』(ほか収録曲のタイトルや、「修道院の廃庭にて」の歌詞にも「菫」が用いられている)から選曲。「春葬」は中原淳一のイラストを使用したジャケットも麗しい『etoiles』(フランス語で「星」を意味する言葉。宝塚ではフィナーレの際、大階段で最初に歌い始める歌姫のことを指す)から……などと、宝野アリカが愛する歌劇の世界観が楽曲にも投影されている。

このベストアルバムのラストナンバーとなる「Adieu」も、ストリングス・アルバム『Gothic Opera』から選曲している。この曲はグスタフ・マーラーが作曲した交響曲第5番の第4楽章「Adagietto」に宝野アリカが歌詞をつけたもの。「Adagietto」は、ルキノ・ヴィスコンティによる1971年の映画『ベニスに死す』にて使用されたことでまた広く知られている。貴族の没落や芸術家の死を描いたヴィスコンティの映画のように、「Adieu」もまた優雅な旋律に歌声を乗せて、陰影のある厳かな世界を築き上げている。

CD初回限定盤のジャケット

またこのアルバムには2000年代以前の楽曲も収録している。ベストアルバムには初収録となる「Rose Moon」「月光夜」は、1998年のアルバム『Noblerot』からの選曲。『Noblerot』はコロムビアよりリリースされたオリジナル・アルバムで、TVアニメ『聖ルミナス女学院』のエンディングテーマ「LABYRINTH」や、人気曲「ナルシス・ノワール」などを収録しており、ジャケットはCLAMPの書き下ろしによるもの。募る恋しさを情感豊かに表わしたバラード「Rose Moon」、さながら窓辺に差し込んだ月の光で織りあげたような、密やかに奏でられる弦楽器の調べが美しい「月光夜」と、これらも至高の楽曲である。

「星月夜」は、片倉三起也が音楽を担当した実写映画『エコエコアザラクII Birth of the Wizard』のエンディングテーマで、1996年7月1日にシングルがポリグラムよりリリースされている。ジャケットは映画制作に参加している寺田克也による書き下ろし。映画に合わせたものかイントロでは一瞬、不穏な雰囲気も立ちこめるが、たおやかな歌声とサウンドから溢れる神秘的な雰囲気に吸い込まれるような、実に優美な楽曲である。「共月亭で逢いましょう」は、1992年7月7日に東芝EMIよりリリースされたメジャーデビューシングル『恋せよ乙女~Love story of ZIPANG ~』に収録している。プログレ~ユーロロックというユニットの出自も見え隠れする不思議でポップな表題曲に対して、こちらは胡弓の音色を交え、哀愁のある抒情的なメロディーを展開。「星月夜」と同じくオルゴールが印象的に使われており、楽曲をセンチメンタルに包み込む。

ハイレゾは音の輪郭が明確で、当時リリースされたCDよりも分離感が向上している。エッジの効いたアレンジやエフェクトなど、立体的な音処理もさらに効果的。〈大和ソング〉では音が迫ってくるような強い勢いが感じられる。また深々と響くストリングスの澄み切った音色は美しく、『Noblerot』に例えれば芳醇なワインといった味わい深さがある。そして、歌声に宿る情念がよりダイレクトに伝わってくるかのような存在感が強く、楽曲の世界観をますます色濃くする。

年代やレーベルの幅を広げ、多岐にわたる選曲を果たした今回のベストアルバム『愛と誠~YAMATO & LOVE×××』。猛々しいサウンドが鳴り響く《YAMATO》とラブバラードで占められた《LOVExxx》と、ALI PROJECTの真髄を動と静に分けて抽出している。四半世紀という歳月の中、楽曲の変化、あるいはその深化も見受けられるが、根底を貫く「アリプロ」らしさはまったく不変である。ふたつのテーマを設けることにより彼らの本質をさらに浮き彫りにする作品となった。

※リスアニ!WEBでは『愛と誠~YAMATO & LOVE×××』について語ったALI PROJECTのインタビューを掲載している。こちらも併せてご覧いただきたい。

リスアニ!WEB 【25周年記念ベストアルバム『愛と誠~YAMATO & LOVE×××』リリース記念、ALI PROJECTインタビュー】
「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」アルバム特設サイト

ALI PROJECT
愛と誠〜YAMATO & LOVE×××

FlyingDog
2017.09.27

FLAC・WAV 96kHz/24bit

ハイレゾはこちら

e-onkyo music
groovers
mora

 収録曲

 1.愛と誠
   2005年06月22日 アルバム『Dilettante』収録

 2.勇侠青春謳 アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』エンディングテーマ
   2006年10月25日 シングル『勇侠青春謳』収録

 3.神風
   2008年08月27日 アルバム『禁書』収録

 4.陸と海と空と
   2015年09月09日 『快楽のススメ』収録

 5.戦争と平和
   2002年07月24日 アルバム『EROTIC & HERETIC』収録

 6.Valkyrja~騎士乙女
   2010年03月17日 ストリングス・アルバム『Gothic Opera』収録

 7.絶國TEMPEST
   2010年09月29日 アルバム『汎新日本主義』収録

 8.少女殉血
   2003年12月03日 サウンドトラック『AVENGER O.S.T.』収録

 9.青嵐血風録
   2007年08月22日 アルバム『Psychedelic Insanity』収録

10.隼の白バラ
   2013年09月11日 アルバム『令嬢薔薇図鑑』収録

11.花と龍
   新曲

12.KING KNIGHT
   2006年09月21日 『.hack//Roots O.S.T.2』収録

13.永久戒厳令
   2016年08月24日 アルバム『A級戒厳令』

14.見ぬ友へ
   2013年09月11日 アルバム『令嬢薔薇図鑑』収録

15.この國の向こうに
   2009年08月26日 アルバム『Poison』収録

16.鎮魂頌
   2005年06月22日 アルバム『Dilettante』収録

17.胡蝶夢心中
   2007年08月22日 アルバム『Psychedelic Insanity』収録

18.遊月恋歌
   2002年07月24日 アルバム『EROTIC & HERETIC』収録

19.BAR酔芙蓉へどうぞ
   2015年09月09日 『快楽のススメ』収録

20.真夏の憂愁夫人
   2012年07月18日 アルバム『贋作師』収録

21.蜜薔薇庭園
   2005年12月07日 ストリングス・アルバム『神々の黄昏』収録

22.Rose Moon
   1998年11月21日 アルバム『Noblerot』収録

23.月光夜
   1998年11月21日 アルバム『Noblerot』収録

24.緋紅的牡丹
   2005年06月22日 アルバム『Dilettante』収録

25.RED WALTZ
   2012年07月18日 アルバム『贋作師』収録

26.薔薇娼館
   2013年09月11日 アルバム『令嬢薔薇図鑑』収録

27.修道院の廃庭にて
   2015年01月21日 ストリングス・アルバム『Violetta Operetta』収録

28.春葬
   2004年06月23日 ストリングス・アルバム『etoiles』収録

29.闇の翼ですべてをつつむ夜のためのアリア
   2001年04月25日 アルバム『Aristocracy』収録

30.星月夜
   1996年7月1日 シングル『星月夜~ルシファー 第四楽章』収録

31.共月亭で逢いましょう
   1992年7月7日 シングル『恋せよ乙女~Love story of ZIPANG ~』収録

32.Adieu
   2010年03月17日 ストリングス・アルバム『Gothic Opera』収録