大原ゆい子 / 煌めく浜辺

TVアニメ『宝石の国』のEDテーマは、ムーンライダーズの鈴木慶一が作詞・作曲・編曲が担当。幻想的で不思議な音世界にイノセンスな歌声がこだまする。シングル形態のアニメ盤、ミニアルバム形態のアーティスト盤の2種類でリリース。

今秋に放送が開始した市川春子原作のTVアニメ『宝石の国』。人間がいなくなった遥か未来の世界を舞台に、人型の身体をもつ宝石たちと月より襲来する「月人」との戦いを描くアクション・ファンタジー作品だ。多くの謎を秘めた物語の驚きを禁じえない展開の数々や、宝石たちを描くCG映像の美しさなどで、大きな注目を集めている。

この話題作のEDテーマ「煌めく浜辺」を歌っているのがシンガー・ソングライターの大原ゆい子。エレクトーンやヴァイオリンなど、幼い頃より楽器に親しんでいた大原は、高校時代にシンガー・シングライターになることを決意する。音楽専門学校卒業後、ギターやピアノの弾き語りによるライブ活動を続けていた彼女は、とあるきっかけにより、導かれるようにオーディションへと応募。劇場版『リトルウィッチアカデミア』の主題歌アーティストとして起用されることとなる。そして、2015年、映画『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』のEDテーマ「Magic Parade」でメジャーデビュー。2017年に放送されたTVアニメ『リトルウィッチアカデミア』では、「星を辿れば」「透明な翼」とEDテーマを続けて担当し、現在に至る。

歌い手として、またソングライティングの面でも、その才能を遺憾なく発揮している大原ゆい子。最新曲となる「煌めく浜辺」は、ムーンライダーズの鈴木慶一が作詞・作曲・編曲を手がけている。自身のソロ活動でも個性溢れる素晴らしい楽曲の数々を生み出している鈴木慶一。その出会いは、大原ゆい子のあらたな一面を引き出すこととなった。なおシングルは表題曲とカップリング曲「光の淵」を収録した〈アニメ盤〉と、それらに3曲の新曲を加えたミニアルバム形態の〈アーティスト盤〉の2種類がリリースされている。

※「煌めく浜辺」について詳しく聞いた、大原ゆい子のインタビューはこちら

「煌めく浜辺」

ソリッドなサウンドが急展開を見せる「鏡面の波」とは対照的に、ゆるやかなテンポで情景を丁寧に映し出すこちらのナンバー。ファンタスティックなイメージを紡ぐ音色はどこか懐かしくまた暖かく、そのサウンドは60~70年代の英国ロックやプログレッシブ・ロックをも思わせる。ところどころにメロトロンによるフレーズも差し込まれており、音程がゆらぐその独特な音色が逆再生の効果音とともに、楽曲にサイケデリック感をほのかに加えている。また後半には夏秋文尚によるマーチのようなドラムや、anonymass、METAFIVEのメンバーとしても知られるゴンドウトモヒコ(子どものための音楽教育番組『ムジカ・ピッコリーノ』にはゴンドリー役として、リヒャルト船長役の鈴木慶一と一緒に出演している)によるフリューゲルホルンも交え、音がさらに華やかに祝祭感も増している。おとぎばなしのような幻想的な世界を生み出す、音の魔術師・鈴木慶一ならではのサウンドが広がる。

ドリーミーな雰囲気が漂うサウンドは、スリリングに幕を閉じる本編での緊張を解きほぐすような、いわばチルアウト的な効果があり、柔らかな語感を活かした言葉で綴られた歌詞も、安らぎも感じさせる歌声とともに耳に心地よく伝わってくる。だがしかし、“記憶はいつでも 形変えて 海に潜み空を舞うね”や、“消えた過去を今の 友に選んで少し眠ろう”など、作品の本質を表すようなフレーズが散りばめられており、鈴木慶一らしくやはり一筋縄ではいかない(“月”や“命”などの言葉もシンプルがゆえ様々な解釈を誘うだろう)。この抽象性もまた、『宝石の国』の世界観に深く繋がっているようである。

ハイレゾはサウンドを支える低域がどっしりと構えており、またそれぞれ楽器の音のなじみのよさが伝わるもので、全体的にレコードのようなまろやかな質感だ。それはノスタルジックな楽曲の雰囲気と相まって、フィルムのような映画的イメージを思い起こさせ、ひいてはエンディング映像が手描きアニメであることも大いに納得してしまうくらい。ボーカルはおっとりとした優しいニュアンスで、ふんわりと空気をまとっているかのようだ。このちょっと脱力したイノセントな感じで、無数の謎をひめた歌詞を運ぶという、ボーカリゼーションの妙も面白い。何百年もの間、宝石のそばにずっと寄り添って見守っている存在、あたかも物語が歌っているような不思議な感覚さえ覚える。

この曲はシングルに収録されているほかの楽曲とは異なり、48kHz/24bitでレコーディングされている。またハイレゾも96kHz/24bit配信のほか楽曲に合わせてアップ・コンバートすることなく、元のデータのまま配信している。サニーデイ・サービスの曽我部恵一をプロデューサーに迎えたソロ作『ヘイト船長とラヴ航海士』『シーシック・セイラーズ登場』では、通常のCDだけでなく、CDとSACDとのハイブリッド盤もリリースし、またそれらを96kHz/24bitやDSDでも配信している鈴木慶一だけに、あえて48kHz/24bitを選択したその意図するところも楽曲からはうかがえる。

「光の淵」

「光の淵」以降の楽曲は大原ゆい子が作詞・作曲している。悠木 碧の「twinkAtrick」や、大原ゆい子のデビュー曲「Magic Parade」(映画『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』主題歌)を手がけているMANYOがアレンジを担当。ゆったりとした幻想的なサウンドは月が照らす浜辺の風景を思い出すような、『宝石の国』の世界観とも通じるもの。「煌めく浜辺」のあとに作られたこともあり、大原がお気に入りの宝石と語るシンシャのイメージも歌詞には映し出されている。夜の静かな空気に澄み切った歌声が浮かび上がり、孤独を憂うその想いをしなやかに描き出す。

「時のミラージュ」

11月30日に発売されたPlayStaion 4用ソフト『リトルウィッチ アカデミア 時の魔法と七不思議』の主題歌。流麗なストリングスと鮮やかなギターに彩られた明るいポップスが花開く。「何度も繰り返す、終わらない1日の謎を解き明かす」というゲームの内容どおり、針を刻む音や時間が巻き戻るような音だったりと、あちらこちらに音の仕掛けを盛り込んでおり、時の冒険へと聴く者をいざなうような楽しさがあるサウンドだ。ハイレゾでは分離感も強く、粒だった音が煌びやかに弾けるような、楽曲の爽やかさがいっそう増している。

「イエスかノーか半分か」

大原ゆい子がシンガーソングライターとしてライブ活動を始めた初期の頃から演奏しているナンバー。「光の淵」や「時のミラージュ」でキラリとしたピアノの音色を聴かせる、河内 肇(浜田省吾のライブメンバーとしても有名)がアレンジを加えている。ジャズクラブの歌姫といった大人な雰囲気を漂わせながらも、いたずらっぽく問いかける歌い方が、かえって声のキュートな魅力をいつも以上に引き出してしまっているのが面白いところ。“半分”でもいいのか? 曖昧じゃダメなのか? 答えを求めてどんどん迫ってくる歌詞と同じく、複雑にうつろう女心がボーカルにも表れている。

「さよならの行方」

90年代のJ-POPにも通じるちょっと懐かしさを感じさせる吉田 穣のアレンジと、大原ゆい子のメロディーセンスが光る、ミニアルバムのラストナンバー。過ぎ去った想いをそっと辿りながらも、“幸せだった”と言い切って前へと進む姿を描くボーカルはちょっと切なげで、広がりのあるサウンドと一体感を伴い、深い余韻を残す。そして、“目の前にあるもの 離さないでね”と優しく告げるラストの展開は、曇り空に陽が差し込んでくるような音の輝きが感じられる。フィナーレを飾るにふさわしいエバーグリーンな一曲。

大原ゆい子
煌めく浜辺【アニメ盤】

TOHO animation RECORDS
2017.12.06

FLAC・WAV 48kHz・96kHz/24bit

ハイレゾはこちら

e-onkyo music
groovers
mora

© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

 収録曲

 1.煌めく浜辺(TVアニメ「宝石の国」エンディングテーマ)
   作詞・作曲・編曲:鈴木慶一

 2.光の淵
   作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:MANYO

 3.煌めく浜辺(Instrumental)

 4.光の淵(Instrumental)

大原ゆい子
煌めく浜辺【アーティスト盤】

TOHO animation RECORDS
2017.12.06

FLAC・WAV 48kHz・96kHz/24bit

ハイレゾはこちら

e-onkyo music
groovers
mora

 収録曲

 1.煌めく浜辺(TVアニメ「宝石の国」エンディングテーマ)
   作詞・作曲・編曲:鈴木慶一

 2.光の淵
   作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:MANYO

 3.時のミラージュ
   作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:吉田 穣

 4.イエスかノーか半分か
   作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:河内 肇

 5.さよならの行方
   作詞・作曲:大原ゆい子 編曲:吉田 穣

 6.煌めく浜辺(Instrumental)

 7.光の淵(Instrumental)

 8.時のミラージュ(Instrumental)

 9.イエスかノーか半分か(Instrumental)

10.さよならの行方(Instrumental)