DAOKO / THANK YOU BLUE

2017.12.20

映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』主題歌、DAOKO × 米津玄師「打上花火」、TVアニメ『血界戦線 & BEYOND』EDテーマ、DAOKO × 岡村靖幸「ステップアップLOVE」、TVアニメ『神撃のバハムートVIRGIN SOUL』のEDテーマ「拝啓グッバイさようなら」「Cinderella step」、CMソング「ダイスキ with TeddyLoid」などを収録した待望の2ndアルバム。

米津玄師とのシングル「打上花火」がロングセラーを続ける中、10月には岡村靖幸との4thシングル「ステップアップ LOVE」をリリース。11月にはBECKとのコラボ楽曲「UP ALL NIGHT x DAOKO」を発表など、目まぐるしいほど意欲的に音楽活動を展開しているDAOKO。待望の2ndアルバム『THANK YOU BLUE』がリリースされた。メジャーデビューアルバムとなった前作『DAOKO』より約2年9カ月ぶりとなる今作は、「ステップアップ LOVE」までの4枚のシングル楽曲を含む全14曲を収録している。

もはやベストアルバムといっても差支えがないほどの充実した内容だが、まず1曲目に「打上花火」、2曲目には「ステップアップ LOVE」と、アルバムの序盤から強力なラインナップ。“パッと光って咲いた”のフレーズが鮮やかに光る「打上花火」は、8月に公開された映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』主題歌。

※「打上花火」のレビューはこちら

「ステップアップ LOVE」は、今秋放送が開始したTVアニメ『血界戦線 & BEYOND』のED主題歌。鮮烈なイントロ、煽り立てるよう早急なビートと体が否応なく反応してしまう躍動的なグルーヴ、またプリンスを思わせるエフェクトを差し込んだ間奏。“いろはも まだ勉強中” “絡む手と手が教科書” そして、 “どきどきしすぎて話せない まだ15の子くらいの大切な心”といったデビュー時と変わらず思春期真っ只中のワードを盛り込んだ歌詞。これら「岡村ちゃん」ならではの魅力がたっぷりと詰まった楽曲に完敗である。岡村靖幸の粘りのある熱いボーカルに感化されたのか、普段よりも低めの歌声を披露したりと、DAOKOのボーカルもいつも以上にセクシー。ハイレゾではダンサブルなサウンドのキレもよく、音の勢いや躍動感がさらに高まる。また歌の表情もリアルに伝わる解像感で、ふたりのボーカルもますますエネルギッシュだ。「打上花火」と「ステップアップ LOVE」と、どちらも男女デュエット曲ながら、それぞれ異なるアプローチで、DAOKOの歌のあらたな表現を導き出している。

3曲目は、「でんでんぱっしょん」「サクラあっぱれーしょん」「でんぱーりーナイト」など、でんぱ組.incの楽曲でもおなじみ、Wiennersの玉屋2060%によるアッパーでカラフルなサウンドメイキングが冴え渡る「Juicy」。そして、4曲目からはORESAMAの小島英也がDAOKOとともに手がけた楽曲が続く。「さみしいかみさま」「ShibuyaK」は、DAOKOが顔出しをしたジャケットも話題になった、2015年10月にリリースされたメジャー1stシングル(両A面シングル)の表題曲。モダンなエレクトロ・ファンクを展開した「さみしいかみさま」と、小室哲哉風サウンドに乗せて渋谷への愛憎する想いを綴った「ShibuyaK」は、小島が手がけた『DAOKO』収録の「かけてあげる」(小島は「作家として初期の仕事であったこともあり大切な曲」と語っている→ORESAMA「ワンダードライブ」インタビュー参照)「一番星」「ぼく」と同じく、メランコリックな心象風景が色濃くにじみだす。キャッチーなサウンドとのバランスがまた絶妙だ。

こちらも小島とDAOKOの共作曲「BANG!」「もしも僕らが GAME の主役で」(どちらも2ndシングルのタイトル曲)は、さらに明るくポップなサウンドが繰り広げられる。前者を懐古的な雰囲気を交えた2000年代後半のチアフルなティーンエイジ・ポップと例えるならば、後者はもっとさかのぼって1980年代前半のアメリカン・ポップといったところ。「BANG!」のキュートなフレーズ “ズキュン♡”や、「もしも僕らが GAME の主役で」でのボーカルの清涼感など、これまであまり見せてこなかった表情をDAOKOから引き出した。もっとも「BANG!」の “ポッと火照る此処の儘 ホテルで肌重なり合って” “全部嘘だけど愛してくれる?”や、「もしも僕らが GAME の主役で」の “平成生まれ INTERNET育ち 死にたい奴は大体友達”(もちろん、あの有名なリリックを下敷きにしている)など、DAOKOらしい甘い毒やチクっと刺す棘はここでも健在。そして、これら4曲からもわかるとおり小島英也は、前作のアルバムに引き続き今作でもまたDAOKOの楽曲において重要な役割を担っている。なおDAOKOによる岡村靖幸「カルアミルク」のカバー(アレンジは小島英也が担当)もハイレゾにて配信されている。

アルバムの中盤へと差しかかる7曲目は「ダイスキ with TeddyLoid」。エッジの効いたサウンドと、“すき キライ 大嫌い スキ”のフレーズが強いインパクトを与えるこの曲は、起用されたTVCMが大量にオンエアーされたこともあり、DAOKOの名をますます多くの人に広く知らしめることとなった。また「日本アニメ(ーター)見本市」の「ME!ME!ME!」でコラボレーションしたTeddyLoid、映像ディレクター・吉崎 響と再びタッグを組んだことも話題に。新人女性シンガー・XAIへの楽曲提供や、TVアニメ『18if』OPテーマの共演をきっかけに「もののけ姫 2018 feat. 米良美一」を発表するなど、先鋭的な音楽活動を続けているTeddyLoidが手がけたサウンドは、恐ろしく鋭いダブステップのトラックだけでもう充分なぐらい刺激的なのだが、間奏ではごりごりのヘヴィメタルを挿入したりと、ノリに乗った制作姿勢も伝わってくる。ハイレゾは、音の粒子が空間に弾ける様子を鮮明に描写したパワフルなサウンドの仕上がり。またくっきりとした輪郭のボーカルが迫ってくるような立体感だ。

クリエイターを育成する専門学校のTVCMということ、また例のフレーズがCMではピックアップされていることから、歌詞には「将来の道を選択」「自分の好きに素直に」なんてイメージが描かれていると思いきや(もちろんそうではあるのだが)、複雑に絡み合った葛藤を描く言葉は生半可なものではなく、“一生飼い犬にでも成るつもり” “消耗 乳繰り合う猿芝居”など、1ミリも手加減をしない。心の奥底までえぐるような、さらけ出すような、容赦のない言葉の連打は、自分自身に真っ向から対峙することを要求する。そんな、ネガティブな部分にまで踏み込んで、誰でもない己を突き詰めることから始まる  “ダイスキを貫け”なので、進み始めた気持ちを扇動的に先導する後半の展開にて、もたらされるカタルシスがものすごい。揺れ動く感情の淀みまでをラップで吐き出していた高校時代を過ごしていたDAOKOならではの、十代の葛藤する心情とシンクロした歌詞が実に見事である。

「拝啓グッバイさようなら」「Cinderella step」は、2017年4月から9月にかけて放送されたTVアニメ『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』のEDテーマだ。どちらもエンディング映像の絵コンテ・演出を『アオハライド』『Dance with Devils』『チア男子!!』の監督である吉村 愛が担当(EDの作画監督はキャラクターデザインの恩田尚之)。「拝啓グッバイさようなら」には、元Superflyのメンバーとして知られる作曲家・プロデューサーの多保孝一と、『アイドルマスター』シリーズの楽曲でもおなじみのサウンドデザイナー/コンポーザー/DJであるTAKU INOUEが参加。メロディーを引き立てる清々しいEDM的アレンジとちょっと絞り出すような歌い方が印象的だ。2クール目のEDテーマ「Cinderella step」は、DAOKOが作詞・作曲を、サカナクションの江島啓一がアレンジを手がけている。浮遊感を生み出すリズミックなサウンドに、ウィスパー成分たっぷりのボーカルが美しく重なる。

音楽の化学反応を求めて、数々のクリエイターとコラボレーションを行ってきたDAOKOだが、SONY ワイヤレスヘッドホン「h.ear」シリーズタイアップソングとなる「同じ夜」では、詞と曲をD.A.N.と共同制作。時代の旗手ともいうべき両者の出会いは、もはや必然のことだったのだろう。ベースがやや持ち上がったメロウなトラックや、鈍色の光を放つミステリアスな雰囲気。出だしの揺らめくコーラスからして、もうD.A.N.のサウンド。ハイレゾでは、繊細な響きをもたらす音の臨場感だけでなく、重なり合った音の隙間を満たす濃密な空気も伝わってくる。ちょっとダルなグルーヴに、微熱を帯びた歌声が漂流を続け、夜に静かに溶け込む。緩やかな歌の節回しが歌謡曲っぽくもあり、DAOKOのルーツである椎名林檎の影響を感じさせる。

そして、10曲目の「GRY」は、THA BLUE HERBのビートメーカー・O.N.Oが参加をしている。今年の2月に行われた『DAOKO 2017 ”青色時代” TOUR』では、各地の公演にDAOKOが尊敬するアーティストをゲストとして迎えているが、O.N.Oは北海道公演に出演(このツアーにはWienners、大森靖子、女王蜂、さユりがゲスト出演している)。こういった交流の広さ、また深さも感じさせる今回のコラボレーションだ。醒めた視線で風景を再構築した、ノイズとカットアップした話し声を重ねたイントロから、サウンドにはひりひりとした空気が充満しており、感情を削ぎ落としたマシーナリーなアブストラクト・ビートの上を綱渡りするかのように、ポエトリーとライミングを使い分け、言葉を並べるDAOKOのボーカルがスリリング。あえて沸点には達しない、低空飛行を続けるままの温度感がすごくいい。「拝啓グッバイさようなら」から「同じ夜」「GRY」「もしも僕らが GAME の主役で」という緩急のついた曲の並びが、楽曲のお互いの特徴をさらに浮き彫りにするかのようでもある。

8月に上梓した初小説と同名のタイトルをつけたラストナンバー「ワンルーム・シーサイド・ステップ」は、DAOKOが今いちばんのお気に入りと語る3ピースバンド・Tempalayとコラボレーション。西海岸のインディーズ直系といったサウンドを特色とするTempalayだが(彼らはポートランドを拠点として活動しているUnknown Mortal Orchestraに大きな影響を受けている)、ここでも得意とする白日夢的な脱力系サイケデリアをとめどなく放出。ロー・ファイなサウンドとレイドバックする、このいなたい感じが、今作の最後を飾るのにもってこいなのだ。黄昏のメロウネスをたたえたメロディーが奏でられるこの曲は、アルバムの中でもとりわけスタンダードな雰囲気を感じさせる。ハイレゾでは、ペダルスティールのようなオールディーズ風味のギターの音色がまろやかで心地よい。切なさを交えたボーカルも美しく、素直な愛のメッセージを届ける歌の世界を艶やかに彩る。

『THANK YOU BLUE』のCD初回限定盤には、DVD「チャームポイント」が同梱されている。このDVDにはDAOKOのこれまでの楽曲をリアレンジし、それに佐伯雄一郎が映像をつけたミュージック・ビデオを収録。ハイレゾではこのDVDに収録されている音源を、「チャームポイント(Special Edition)」として配信している。

「チャームポイント(Special Edition)」

1曲目の「チャームポイント」(岡村靖幸のカバーではない)は、Tempalayのサポートを務め、KANDYTOWNの呂布のライブに客演しているAAAMYYYによるトラックにポエトリーを乗せたナンバー。江島啓一のアレンジによる椎名林檎「歌舞伎町の女王」のカバーは、トランシーなサウンドと想いをかりたてるような情感豊かなボーカルから最大限のリスペクトが伝わる。女王蜂のアヴちゃんがリアレンジした「さみしいかみさま (Re-Arrange)」は、ギターのカッティングをたっぷり加え、ナイル・ロジャース好きな小島英也のお株を奪う勢い。同じく小島が手がけた「ぼく」を、「夜を使いはたして feat. PUNPEE」がフロアでヘビープレイされ、話題を呼んでいたトラックメーカー・STUTSがリコンストラクト。MPCをリアルタイムで演奏することで生まれる独特なグルーヴと、アーバンメロウなタッチのサウンドがこの曲によく似合っている。

インディーズ時代の代表曲もリアレンジしており、「BOY (Re-Arrange) 」(『GRAVITY』に収録)は、ロサンゼルスを拠点に活動をしている日本人プロデューサー・starRoが担当。The Silver Lake Chorus「Heavy Star Movin’ (starRo Remix)」が2017年のグラミー賞の「最優秀リミックス・レコーディング部門」にノミネートされたことも記憶に新しいstarRoだが、ダウンテンポを基調としたフューチャー・ソウルで、DJ6月が作った原曲の魅力をさらに引き出している。インディーズ時代の1stアルバム『HYPER GIRL -向こう側の女の子-』に収録され、中島哲也監督の映画『渇き。』の挿入歌にもなった「Fog」(プロデュースは、不可思議/wonderboyや神門、狐火などのトラックを手がける観音クリエイション)を、GOTH-TRADがリアレンジしているのも聴き逃せない。原曲のテイストを残しつつも、一音一音に不穏な雰囲気がこもってしまうのが、音凶の刺客であるGOTH-TRADらしい。そして、こちらも名曲、NHK Eテレの番組『人生デザインU-29』のEDテーマとして書き下ろされた、RHYMESTERのMummy-Dとのコラボ曲「okay!」が今回、収録されているのもうれしい。この「チャームポイント」もまた「耳ヲ貸スベキ」作品である。

GREAT3の片寄明人がプロデュースを務めた『DAOKO』がインディーズからメジャーへと移り変わる瞬間を切り取ったアルバムとするならば、この『THANK YOU BLUE』はメジャーデビュー以降の今日までをロングスパンで捉えたアルバムといえる。そして、アーティストとして高みを目指し、多彩な表現を追求してきたDAOKOの集大成となる作品だ。

DAOKOの「青の時代」を象徴する、限りなくブルーなアートワーク。篠山紀信が撮影したジャケット写真に写るDAOKOの視線からも、今作に対しての揺るぎない自信が伝わってくる。そして、それとともにあらたなステージへと向かう決意がタイトルに示されている。アンダーグラウンドとオーバーグラウンドの境界を融解する、その特異な音楽性はこれからもまた音楽シーンを更新していくことだろう。

DAOKO
THANK YOU BLUE

TOY’S FACTORY
2017.12.20

FLAC 96kHz/24bit

ハイレゾはこちら

mora

 収録曲

 1.打上花火 (DAOKO × 米津玄師)
   作詞・作曲:米津玄師 編曲:米津玄師 & 田中隼人 Produced by 米津玄師

 2.ステップアップ LOVE (DAOKO × 岡村靖幸)
   作詞:DAOKO・岡村靖幸 作曲・編曲 & プロデュース:岡村靖幸 Produced by 岡村靖幸

 3.Juicy
   作詞 DAOKO 作曲:DAOKO・玉屋 2060% (Wienners) 編曲:玉屋 2060% (Wienners)

 4.さみしいかみさま
   作詞:DAOKO 作曲:DAOKO・小島英也 (ORESAMA) 編曲:小島英也 (ORESAMA)

 5.ShibuyaK
   作詞:DAOKO 作曲:DAOKO・小島英也 (ORESAMA) 編曲:小島英也 (ORESAMA)

 6.BANG!
   作詞:DAOKO 作曲:DAOKO・小島英也 (ORESAMA) 編曲:小島英也 (ORESAMA)

 7.ダイスキ with TeddyLoid
   作詞:DAOKO 作曲:DAOKO・TeddyLoid 編曲:TeddyLoid Produced by TeddyLoid

 8.拝啓グッバイさようなら
   作詞:DAOKO 作曲:多保孝一・TAKU INOUE・DAOKO 編曲:TAKU INOUE

 9.同じ夜
   作詞:DAOKO・櫻木大悟 作曲:DAOKO・D.A.N. 編曲:D.A.N.

10.GRY
   作詞:DAOKO 作曲:DAOKO・O.N.O (THA BLUE HERB) 編曲:O.N.O (THA BLUE HERB)

11.もしも僕らが GAME の主役で
   作詞:DAOKO 作曲:DAOKO・小島英也 (ORESAMA) 編曲:小島英也 (ORESAMA)

12.ゆめみてたのあたし
   作詞:DAOKO 作曲:DAOKO・小島英也 (ORESAMA) 編曲:小島英也 (ORESAMA)

13.Cinderella step
   作詞・作曲:DAOKO 編曲:江島啓一 ( サカナクション )

14.ワンルーム・シーサイド・ステップ
   作詞:DAOKO 作曲:DAOKO・Tempalay 編曲:Tempalay

DAOKO
チャームポイント (Special Edition)

TOY’S FACTORY
2017.12.20

FLAC 96kHz/24bit

ハイレゾはこちら

mora

 収録曲

 1.チャームポイント ▶︎AAAMYYY

 2.歌舞伎町の女王 ▶︎江島啓一 ( サカナクション)

 3.BOY (Re-Arrange) ▶︎starRo

 4.ぼく (Re-Arrange) ▶︎STUTS

 5.okay! ▶︎Mummy-D (RHYMESTER)

 6.さみしいかみさま (Re-Arrange) ▶︎薔薇園アヴ (女王蜂)

 7. Fog (Re-Arrange) ▶︎GOTH-TRAD